『賢い医師生活』の今からでも間に合う“処方箋” 日米医療ドラマとは異なる独自性を読む

とにかく食べる医師たち 恋愛模様も必見

 “同期の5人組”といえば、『グレイズ・アナトミー』の初期を思い出す人もいるかもしれない。シアトルの大病院を舞台に、メレディス・グレイをはじめとする5人のインターンが病院で一人前の医師になるべく奮闘する。今や日本でシーズン17が放送、本国ではシーズン18を控える米医療ドラマ史上最長シリーズ。シーズン17では現実と同様、新型コロナウイルスによる未曽有のパンデミックを描いたことも話題となった。

 『グレアナ』の魅力の1つは、医師たちの赤裸々な恋愛模様だ。『賢い医師生活』にも全くない訳ではなくが、国民性もあってか、宿直室や備品室でいちゃついたり、開胸した状態で痴話ゲンカしたりはほぼない。せいぜい誰もいないエレベーターでそっと手をつなぐ程度。キスは病院の自動ドアを出た瞬間や非常階段でこっそり、という感じ。

 代わりに、というわけではないが、『賢い医師生活』ではとにかくよく食べる。それぞれ個室を持つほどの立場なので、出前をとっては誰かの部屋に集まり、キンパやトッポギを先を争うように食べるのだ(ジュンワンとソンファが“大食いキャラ”設定)。近況報告をしたり、バンドの練習曲を決めたり、こうしたシーンはシリアスになりがちな医療ドラマの小休止となる。最初は1人で食事をしていたソッキョンも仲間に加わり、彼に片想いしているミナから誘われて一緒に食べたこともあった。

 今作に影響を受けたのか定かではないが、月9『ナイト・ドクター』も夜勤明けの医師たちがスイカ割りをしたり、流しそうめんをしたり、オートキャンプにも出かけ始めた。こちらの5人も、夜間救急医を選んだ理由はバラバラでも、ひと仕事を終えた安堵感から素直な笑顔がこぼれる昼のシーンが利いている。

 加えてここへ来て、シーズン1のラストで結ばれたジョンウォンとギョウルの「微笑ましい」カップル、ジュンワンとイクジュンの妹イクスンの一度破れた恋、そしてイクジュンとソンファの学生時代からのつかず離れずの関係も動き始めてきた。劇中の名言を借りれば、「咳と愛は我慢できない」もの。このコロナ禍、最も厳しい現場にいる医療者を徹底して市井の人として描く『賢い医師生活』は、命の現場ゆえに涙にくれることもあれど、中庭の陽だまりのような、微笑ましいまでの愛が溢れ出している。

 なお、制作は、80年代や90年代のカルチャーと“青春時代”を描く『応答せよ』シリーズや、人気野球選手の刑務所生活を描いた『刑務所のルールブック』(原題は『賢い刑務所生活』)を手がけてきた監督シン・ウォンホと脚本家イ・ウジョンのチーム。熟練者になれば、数々のカメオ出演も楽しむことができる。

■配信情報
『賢い医師生活』
Netflixにて配信中
写真はtvN公式サイトより

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