恋愛ドラマとしてアップデートされた『わかっていても』 最終回直前、衝撃的な展開に

 韓国ではJTBCで放送中、ならびにNetflixオリジナルシリーズとして世界配信中の韓国ドラマ『わかっていても』(全10話)。あることをきっかけに彼氏と別れ、愛を信じられなくなった主人公ユ・ナビ(ハン・ソヒ)が、イケメンでモテるパク・ジェオン(ソン・ガン)と出会う。しかし、彼もまた愛を信じず、恋愛は面倒だけど“体の関係ありの友達”は欲しいと思うタイプで、二人の非常に現代的かつ考えさせられる恋愛模様に私たちは毎話頭を抱えて見守ったりしている。

 そしてついに8月15日に配信された第9話。最終回直前というのに、あれよあれよと目も当てられない展開が続く。ナビとジェオン、そしてヤン・ドヒョク(チェ・ジョンヒョブ)の三角関係はどのように決着をつけるのか。その前にこれまでの二人や、周囲の登場人物の恋の動きを振り返っておこう。

※本稿は『わかっていても』第9話までの内容に触れています。

これまでのナビとジェオン

 本作の物語は、ナビがモラハラ彼氏と別れるところから始まる。彼女にとってそれがほとんど初めてのちゃんとした恋愛経験でもあったため、彼氏の束縛や身勝手な考え、行動に振り回され、支配されていたナビ。そのクズ男からの呪縛をようやく自ら解き、自由になった矢先で出会ったのが新たなクズ男……ジェオンだった。ジェオンは呼吸をするのと同じような容易さで、バーにいる彼女の隣に座り、その後ダーツなどをしてボディタッチをし、「うちで飼っている蝶(ナビ)を見に来る?」と家に誘う。もうどんな仕草をしても抗えない、ズルすぎるイケメンからの誘いを断り、近づけられる信じられないくらい整った顔を避けてキスさせないなど、しばらくナビの理性との攻防戦が繰り広げられた。しかし、結局はバーで連絡先も交換しなかった彼と大学で再会し、その縁に運命を再び感じてしまった彼女は彼に強烈に惹かれ、自らキスをし、体の関係にもなってしまう。

 セフレとの付き合い方みたいなものがここまで20代の等身大の感覚で描かれたドラマは少ない。そこには、韓国におけるこれまでの婚前性交渉に対する厳しい考え、貞操観念が関わっていると思う。しかし時代は変わりつつある。そのひと昔前の恋愛のモラルや感覚ではなく、あくまで本当に“今の若者がどんな恋愛をしているか”を彼らの目線で『わかっていても』は映している。

 このドラマのあらすじ的にお約束なのが、遊び人のジェオンがナビに本気で恋をして彼女の信頼を得ようとするという展開。もちろん、実際にそうなってはいるのだが、そこに至るまでの過程はあまりお約束ではない。というのも、ジェオンがあまりにも切ない顔をするものだからナビのように都合よく忘れてしまうけれど、彼の行動を冷静に捉えるとやはりクズで、しかもそこに変化があまりないのだ。従来のドラマならすぐに改心して、心を入れ替えて行動も改めるのに、ジェオンはあいも変わらずな様子。第5話のタイトル「変わらないとわかっていても」が象徴するように、このドラマの中ではそう簡単に人の本性が変わることがなく、それもまた本作の「セフレとのどうしようもない関係」に準じるリアルでビターなテーマである。

 ナビが自分の幼なじみのユン・ソラ(イ・ヨルム)に「まだ付き合っている」と嘘を言われたために自分と距離をとったことに気づくジェオン。母に本当の恋たるものを説かれ、その相手がナビだと気づいたから地方に行ってしまった彼女に会いに行くのに、そこで幼なじみのヤン・ドヒョク(チェ・ジョンヒョブ)と楽しそうにしているナビを見て嫉妬心を募らせる。だからキスばかり迫ったり、ドヒョクを挑発したりと肝心な気持ちを伝えないまま進んでしまう。その行動は、ナビ側からすれば彼が本当は何がしたいのかさっぱりわからないようになっている。私たち視聴者がジェオン側の感情の起伏をドラマとして観ているからまだ彼の気持ちがわかるものの、現実でもし自分がナビの立場になっていたら相当困惑するはずなのだ。

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