『漂着者』立て続く不吉な出来事 白石麻衣演じる詠美の逃れられぬ運命とは

 台本と同じように設計図が刻まれているのがDNAの塩基配列だ。自然が生んだ偶然の産物に人の手が介在するとどうなるか。柴田(生瀬勝久)が言うところの「タネ」には遺伝子工学が関係していた。特殊な遺伝子を持つ少数民族について、旧ソ連の秘密機関としあわせの鐘の家のローゼン岸本(野間口徹)は何らかの事実をつかんでいる。国原(船越英一郎)や古郡、また後宮教授(越村公一)が命を奪われた(あるいは命を絶った)のは、真実を求めてもう一方のテリトリーに足を踏み入れたことが原因だった。

 科学的なデータに基づくのか、神話的な啓示と受け取るかはさておき、この状況を生み出したのがヘミングウェイであることに疑う余地はない。未来を見通す能力が遺伝的な素因によるとすれば、一種の遺伝的決定論になる。その上で自然の作用をコントロールする人為が災厄と福音のどちらをもたらすかは決定論の範疇を超えており、そこにサスペンスの生まれる余地がある。神と軍事利用が並列に置かれる本作をオカルトとして一蹴することはたやすい。しかし、警戒すべきは真実を知ろうとして先入観や偏見という人為的な決定論に傾斜してしまう態度だろう。複層的な構造の『漂着者』で試されているのは私たちである。

■放送情報
『漂着者』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15~24:15放送
出演:斎藤工、白石麻衣、船越英一郎、リリー・フランキー、戸塚純貴、野間口徹、橋本じゅん、生瀬勝久、太田奈緒、隅田杏花、吉田志織、橋本じゅん
企画・原作:秋元康
脚本:神田優、ブラジリィー・アン・山田
ゼネラルプロデューサー:横地郁英(テレビ朝日)
プロデューサー:飯田サヤカ(テレビ朝日)、菊池誠(アズバーズ)、岡美鶴(アズバーズ)
演出:本橋圭太(アズバーズ)、山本大輔(アズバーズ)
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日
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