ドウェイン・ジョンソンはなぜ愛される? “スター俳優”に至るまでの紆余曲折

 振り返ってみれば、これまでアクションスターとして親しまれてきた俳優たちの多くは、別の世界から俳優へと転身を遂げてきた者が多い。代表的なのはボディビルから転身したアーノルド・シュワルツェネッガーであり、その精巧な肉体造形によってもたらされる常人離れした迫力を活かす。彼がターミネーター役でその人気を不動のものにしたように、適材適所でポテンシャルが発揮されてこそアクションスターは輝くものだ。スティーヴン・セガールやジャン=クロード・ヴァン・ダムのような格闘技界から転身した俳優たちが渋さと気迫を兼ね備えたアンタッチャブルな雰囲気を携えたり、水泳の飛込み選手から転身したジェイソン・ステイサムが体幹を活かした高精細かつキレのあるアクションを得意とするように。

 ドウェインの場合はやはり画面全体を大きく使ったアクションが映える。そして肉弾戦もさることながら、武器や車、手に持つものでも対峙するものでも何か映画的にシンボリックなものと融合した時にガラリと強さを増す。それはやはりスポーツ性よりもストーリー性を重視し、“見せる”こと“見られる”ことに意識を向けたエンターテインメントを作り出してきたWWEを経たことが大きいのではないだろうか。それはアクションスターというスクリーンの中の遠い存在と観客との距離感を大きく覆すものであり、アクション映画特有の異世界感を打破し、よりポップなものへとつなげていくものでもある。『カリフォルニア・ダウン』や『スカイスクレイパー』といった一見無軌道なアクションが際立つ映画ですら、どこかそこに信憑性が生まれることで作品のドラマ性が保持されたわけだし、『ジュマンジ』シリーズのようなゲーム的なコメディもそれにしかりだ。

Netflix映画『レッド・ノーティス』 Netflixにて、11月12日(金)より独占配信開始

 そうしたポップなスター性によって、ドウェインは映画ファンや業界関係者から強力な信頼を勝ち得ることにつながる。フォーブスが発表する「最も稼げる俳優ランキング」(これはギャラベースと興収ベースの二つのランキングがあるが、いずれもドウェインは常連である)がそれを証明しており、今回のようなディズニーのアトラクション作品、今後控えるNetflixの『レッド・ノーティス』やDCの『ブラックアダム(原題)』と、ビッグタイトルばかり続くのもその成果であろう。また近年の出演作では自らプロデューサーとして参加もし、さらに娯楽性を高める働きを見せているとあれば、もはやその強さは盤石のものであろう。

■公開情報
『ジャングル・クルーズ』
映画館・ディズニープラス プレミア アクセスにて公開中
※プレミア アクセスは追加支払いが必要
監督:ジャウム・コレット=セラ
出演:ドウェイン・ジョンソン、エミリー・ブラント
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン 
(c)2021 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

関連記事