『NIGHT HEAD』が蘇った理由 『東京喰種』とも重なる“対立すること”への問い

 1992年に放送され、カルト的人気を得たTVドラマ『NIGHT HEAD』が、30年の時を経て、オリジナルTVアニメ『NIGHT HEAD 2041』として帰ってきた。テレビドラマの原作者である飯田譲治が脚本・構成を担当し、映画『シン・ゴジラ』や『寄生獣』などVFX技術を駆使した作品で注目を浴びる白組がアニメーション制作を担当する。

 『NIGHT HEAD 2041』の舞台は、超能力や超常現象といったものを完全に否定する物理主義国家となった2041年の東京。2041年という近い未来の話だが、実は第3次世界大戦後、世界の人口が3分の1まで減ってしまった世界という設定になっている。実際、第1話で描かれる東京はテクノロジーが進化した近未来感はなく、どことなく暗く人も少ない。

 物語は、超能力を持ってしまったために社会から疎外された霧原兄弟と、非科学的な危険思想を取り締まる国家保安本部の精鋭部隊に所属する黒木兄弟という、相対する2組の兄弟を軸に動いていく。黒木兄弟はTVアニメから登場する新キャラクターだ。能力を持ってしまったが故に居場所のない霧原兄弟と、それを取り締まる黒木兄弟の邂逅。果たして彼らの運命はどのように動いていくのだろうか。

TVアニメ『NIGHT HEAD 2041』 メインPV

 すでに放送された第1話・第2話を振り返ってみよう。まず第1話「結界-Onset-」では、国家保安本部の任務につく黒木兄弟が任務中に謎の少女と出会うところから描かれる。超能力で任務完了目前、謎の爆発が起こり、謎の少女は「結界が破られた」と言い残し2人の前から姿を消す。

 一方、15年もの間研究所に隔離され、なぜか森の中で目を覚ました霧原兄弟は、やっと自分たちを受け入れてくれる世界になったのだと喜んで外の世界へと向かう。しかし、そこは物理主義の2041年の東京。まだ自分たちを受け入れてくれる世界ではないということを知ってしまい……。

 第2話「偽物-Deception」では、いよいよ霧原兄弟と黒木兄弟が顔を合わせる。任務で取り逃した男を追うためにダイナーを包囲した黒木兄弟。そこには偶然霧原兄弟も居合わせていた。隔離期間と合わない時代設定、能力者の存在を隠していた政府に、政府に協力するマインドコントロールを操る能力者の出現。物語は多くの謎を残して第3話へと向かう。

 「NIGHT HEAD」とは、人間が使用していないとされる脳の70%もの容量を差す。超能力などの科学的に証明されない不思議な力はこの70%の部分に秘められており、NIGHT HEADは霧原兄弟の持つ能力のことであり、そして2041年の東京が完全否定し、厳しく取り締まるものということになる。

 人によって能力は異なり、霧原兄弟の能力は第1話で弟、第2話で兄の能力が明かされる。兄・直人はサイコキネシス、弟・直也はリーディングの能力だ。ただ、2人とも能力をコントロールしきれていないようだった。

 こういった超能力や精神エネルギーが物語の核となる作品は多い。人気TVドラマ『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜』(TBS系)や、能力とは少し違うが「追う者」と「追われる者」でいうと『東京喰種 トーキョーグール』に近いものもあるかもしれない。持つ者を持たざる者が恐れ、忌み嫌い、或いは持つ者が持たざる者を蹂躙する。2作品に共通しているのは、対立する両者が生きている者同士であることだ。安定した暮らしを、自分たちの居場所を求めて対峙する構図は、まさに霧原兄弟と黒木兄弟そのものだ。

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