『エール』は今も視聴者の心に響き続ける 総集編は窪田正孝の変化、古川琴音の好演に注目

 朝ドラ『エール 総集編』(NHK総合)が本日7月23日に放送となる。その前日、22日には『いだてん〜東京オリムピック噺〜総集編』がオンエアとなっており、2作品に共通している題材が「オリンピック」である。

 『エール』の主人公で音楽家・古関裕而をモデルとした裕一(窪田正孝)が生まれ育った福島県福島市では東京2020オリンピックの開会式を前に、7月21日より最初の会場として野球・ソフトボール競技がスタートしている。会場となっている福島あづま球場のほど近くにあるのが、『エール』のタイトルバックで裕一が気持ちよさそうに佇む水林自然林。裕一と同じ場所に立ち、記念写真を撮影するファンの聖地になっているという。古関裕而記念館は展示内容や構成を一新し今年3月にリニューアルオープン。福島中心市街地では移動音楽館をコンセプトとした「古関裕而メロディーバス」が周遊し、福島駅西口にある大型マルチビジョンは愛称に「ふくしまエールビジョン」という名が付けられ待ち合わせ場所などの新たなランドマークに。福島では『エール』がブームから日常的に親しまれている存在になっている印象だ。

 そんな福島で開かれた『エールファン感謝祭』にて「仕事以外でも今後も足を運びたい」と福島に寄り添い続ける姿勢を示していたのが、主演を務めた窪田正孝である。裕一は時に音楽を生む苦しみに、その責任に葛藤しながらも、流行歌から応援歌、戦時歌謡までとあらゆる音楽と向き合っていくこととなる。誰もが認める天才でありながらなかなか自信を持てない裕一には、いつも背中を押してくれる存在がいた。それが妻の音(二階堂ふみ)であり、裕一と一緒に「福島三羽ガラス」と呼ばれる久志(山崎育三郎)や鉄男(中村蒼)といった面々。妊娠して音楽を続けるか迷う音に「裕一の作った曲を、音が大きな舞台で歌う」という2人の夢として彼女の手を取り一緒に歩んでいくことを誓ったシーン、そしてその後に描かれる夢の続きは『エール』における名場面の一つだ。

 誰に対しても誠実でそっと相手に寄り添い続けた裕一。戦時歌謡を生み出した責務によって終戦直後に経験する挫折から立ち直り、また音楽と向き合っていく裕一は、時代に寄り添った音楽を作っていく。筆者が観ていて印象的だったのは、徐々に柔らかくなっていく裕一の表情だ。特に娘の華(古川琴音)が生まれ、後の夫となるアキラ(宮沢氷魚)との恋愛が描かれる終盤パートでは親バカっぷりも炸裂する垢抜けた姿を見せる。暗いトンネルを彷徨うこととなる戦時中の裕一を考えると大きなギャップであり、総集編ではその表情の違いがより楽しめるだろう。

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