『青天を衝け』慶喜と家康が交わる奇跡の演出 放送休止前に“七三分け”の吉沢亮も登場

『青天を衝け』慶喜と家康が交わる奇跡の演出

 「政権を帝に返上する」ーー慶応三年十月十二日、慶喜(草なぎ剛)は二条城で老中らを前に、政権を天皇に返上すると告げた。大政奉還の宣言である。

 大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)第23回「篤太夫と最後の将軍」では、慶喜が最後の将軍として、約260年続いた江戸幕府を閉じる。その決断は幕閣や大奥から大きな反発と混乱を招くこととなる。自害しようとする歌橋(峯村リエ)が「慶喜が徳川を殺したのです」というセリフはその象徴であろう。

 だが、慶喜としては、いつ幕府に攻めてくるか分からない薩摩の存在、成立しないフランスからの借款、一向に進まない陸海軍の整備と「詰み」になる前に、政を朝廷に返上すれば薩摩も振り上げた拳を下ろす先を見失うという考えの下であった。その本心が掴めないとも言われる慶喜であるが、この大政奉還のシーンは慶喜の心情に寄り添った演出であったように思う。それに一役買っていたのが徳川家康(北大路欣也)だ。

「御神君以来の大業を一朝にして廃するは、ご先霊に対して恐れ入りたる次第ながら、天下を治め、天子様のお心を安んじ奉るは、すなわち御神君の偉業を引き継ぐことである」

 御神君とは、神として日光東照宮に祀られた家康を指す。真っ直ぐな眼差しで先代への敬意を、そして自身の決意を述べる慶喜の言葉に、家康は深く感激し天を仰ぐ。徳川家初代と最後の将軍が200年余りの時を超え交わる奇跡の演出であり、慶喜を肯定する数少ない味方が家康ということになる。


 一方、フランスの栄一(吉沢亮)は「郷に入れば郷に従え」と髷を落とし、刀を外し、洋装といった出で立ちに。七三分けの髪型に、蝶ネクタイ、スーツに身を包む栄一の姿は新鮮だ。驚くのは銀行オーナーのエラール相手に栄一が自らフランス語を喋ること。短い滞在であったが帰国直前にはフランス語を理解できるようになったと史実にはあり、通詞なしで簡単な会話を話す栄一の姿は自然なことである。そして、栄一は「異国がどこか風通しいいのはこのせいか」と身分に関係なく誰もが力を生かし国のために励む異国の姿に感銘を受けることとなる。

 血洗島では栄一の見立て養子になった平九郎(岡田健史)が、江戸に向かおうとしていた。旅立つ姿に耐えきれず、その場を立ち去ってしまうてい(藤野涼子)。平九郎とていの初々しい恋物語は第15回より描かれている。お手製のお守りを手渡すていに、平九郎は彼女を抱きしめ「俺はいつかおめぇを嫁に欲しい」と告白するのだった。それは栄一がフランスから帰ってきた後に、後継ぎは問題ないと平九郎が再び血洗島に帰ってきた時の話。嬉しさのあまり泣き出すていに、平九郎はもう一度彼女を抱きしめ、額を合わせて幸せを噛み締めるのであった。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる