『賢い医師生活』シーズン2第4話、チョン・ギョンホの熱さが牽引するジュンワンの変化

 バンド演奏曲ではないが、イクジュンとの散歩中にソンファが歌っているのが、90年代後期のアイドルグループとして一時代を築いたSechs Kies(ジェクスキス)の「Couple」。メンバーの1人、ウン・ジウォンは『応答せよ1997』に出演し、『賢い医師生活』シーズン1第3話でラジオDJの声の出演をしている。

 『恋のスケッチ~応答せよ1988~』で「Let’s Forget It」が流れるのは、第34話で大学入試を前に別々の道を選ぶカップルのシーン。『応答せよ1997』で「Couple」が使われる第8話は、高校生の主人公たちが1988年の大学修学能力試験を受けるエピソードだ。イクジュンとソンファは、同じく1988年の二次試験で初めて出会っていることがシーズン1で描かれていた。

 第3話、第4話ともに、ストーリーと直接連携しない位置にバンド演奏シーンが挿入されている。第4話に関しては一切の説明もなく、まるでドラマのエンディング曲のように演奏し、ジュンワンの「次の曲」というセリフとドラムカウント、ギターのストロークで次週に続く構成だ。演出やセリフに違和感を感じたときには、必ずクリエイターの意図がある。現在進行形で成長を続けるシーズン2の医師たちにとって、懐かしい過去や楽曲は日常の一部分でしかない。シーズン3はシーズン2が向かう先にあり、彼らにもまだこの道がどんな場所に辿り着くのかわかっていないのだろう。

 バラエティ番組を手掛けていたシン・ウォンホとイ・ウジョンのコンビが連続ドラマの世界で名を馳せるきっかけとなった『応答せよ』3作品は、彼らのキャリアに輝かしい軌道を築いた。同時に、ドラマを作り続ける上で、あまりにも成功した『応答せよ』の現代から90年代80年代のポップカルチャーと時代背景を振り返り、主人公の“夫探し”をする仕掛けの呪縛に苦しめられていた状況もあるのではないか。このエピソードの中心にあるジュンワン役のチョン・ギョンホのように、シーズン制を導入したことで、どの役柄もクリエイターが作った設定を超えて自ら変化を始めている。「Couple」では、結ばれなかった過去があるソンファが「昔より今の君のほうがきっとすてきだよ」と歌う。「Let’s Forget It」では「もう、忘れることにしましょう」と、シーズン1で牧師になる夢を諦めたジョンウォンと、ソンファの誕生日に告白したソッキョンに向かって、誕生日プレゼントを渡せなかったイクジュンが笑顔で歌う。第4話で歌われた『応答せよ』からの2曲は、過去に傷を持つキャラクターと制作者を含め、前へ進もうという意思表示のように思える。演奏中一度も目線を上げず誰とも視線を合わせないジュンワンが「次の曲」と促す先では、どんな未来が描かれるのだろうか。

 『賢い医師生活』第5話は7月15日夜に配信予定。

■平井伊都子
ロサンゼルス在住映画ライター。在ロサンゼルス総領事館にて3年間の任期付外交官を経て、映画業界に復帰。

■配信情報
『賢い医師生活』
『応答せよ1997』
『恋のスケッチ~応答せよ1988~』
Netflixにて配信中
写真はtvN公式サイトより

関連記事