『おかえりモネ』清原果耶が見せてきた豊富な表情 視聴者に想像させる芝居の妙

 清原の魅力は、やはり静かに感情の発露を見せられるところにあるのではないだろうか。本作でも家族の、あるいは新次や亮(永瀬廉)の本音に触れた際にそれに呼応して自然と引き出されるかのように涙がポロポロと溢れていた。静かだからこそ、“これが全てではないのだろう”と予感させられる。きっと彼女の中にはまだまだ消化し切れていない思いがあるのだろうと想像させる。

 そんな百音の告白に対して朝岡が返す「何もできなかったと思っているのはあなただけではありません」があれほどまでに百音や視聴者に染み入るのは、清原がこれまで周囲の大人たちと触れ合いながら誰もが抱える“ままならなさ”に触れ、それを許容することで自分自身のことを徐々に許し受け入れ、取り戻してきた過程があったからこそだ。傷つき、自分に対しても半信半疑な百音だからこそ、すぐに誰かの言葉やアドバイスに飛びつくのではなく、ゆっくりゆっくりその言葉を噛み砕き吸い込み、自分自身に染み渡らせる姿に説得力が宿る。まるで、樹木が大地からゆっくりと水分を吸い上げるように。

 「気象予報士試験に合格したからと言って、何かできるとは思ってないんです。でも、今はこれをやるしかないんです」と菅波(坂口健太郎)に話した百音は、故郷を再び去ることになる前に家族に、友人に、またサヤカ(夏木マリ)にどんな言葉を語るのだろうか。上京する前に、彼女のルーツを再確認するつもりで気仙沼・登米パートの最後を堪能したい。

■佳香(かこ)
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好き。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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