『#家族募集します』俳優・重岡大毅が序盤から見せた真骨頂 俊平の想いに涙が止まらない

 こんなに泣かされるとは思わなかった。家をシェアすることで気づかされる“家族のあり方”というイマドキのテーマとタイトル、そしてジャニーズアイドルが主演の作品……となると、ポップでライトなホームドラマがくると思うではないか。しかし、そんな先入観をいい意味で裏切ってくれた、ドラマ『#家族募集します』(TBS系)。

 第1話にして、重岡大毅(ジャニーズWEST)が見せてくれたのは、まるでクライマックスを見ているかのような、感情を爆発させる演技だった。重岡の涙が呼び水となって、その演技を受ける共演者も、そしてそれを見守る視聴者の涙腺を破壊していく。「ここ笑うところ!」。そう言いながら、まさに涙がこぼれ落ちるかのようにあふれる思いを吐露する姿は、俳優・重岡大毅の真骨頂と呼びたくなる演技だった。

 重岡が扮するのは、小さな絵本出版社「エッグプラント」に務める赤城俊平。事故により妻・みどり(山本美月)に先立たれ、幼い息子を育てるシングルファーザーで、まだ保育園児の息子・陽(佐藤遙灯)には、そのことについて話すことができずにいた。仕事も育児も1人で切り盛りしなければならない毎日は、お弁当を食べながらついウトウトしてしまうほど過酷だ。

 だが、俊平は努めて明るく笑顔で過ごす。きっとそれは俊平自身が、まだみどりの死を受け入れたくないから。泣いたり、落ち込んだりすることは、むしろ残酷な現実と向き合うことになる。部屋の中もみどりがいたころのまま。もう少しだけ、その気配を感じながら過ごしていたい。まだ今は陽と共に「ママの帰りを待っている」を続けていたい。その姿は、笑顔を絶やさず謙虚に努力してきた重岡自身の姿とも重なって、嘘偽りのない“健気さ”として私たちの心を突く。

 現在、育児中の人はもちろん、きっと誰もが様々な状況下で、大変な思いを胸に隠している。自分自身を崩さないために、奥歯を食いしばりながら笑顔で毎日必死で生きているのだ。それは決して同情してもらいたいからではなく、自分が選んだ道なのだから、と。

 きっと、その悲しみや苦しみを誰かと分かち合うことができたら素晴らしいことだろう。しかし今の世の中そんなに簡単に心の荷を預けられるほど人との距離は近くない。一度そのデリケートな荷物を誰かに渡して、もしぞんざいに扱われたら、きっとさらに傷つくことになる。ならば、そんなリスクを取らずに1人で耐えたほうがいい。そんな現代人が持つ繊細な揺らぎを、重岡が演じる俊平の笑顔に投影せずにはいられない。

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