『おかえりモネ』涙なしでは観られない浅野忠信と永瀬廉の名演 新次が“立ち直らない理由”

 アルコール依存症を克服することも、いつの間にか同じ意味をはらんでしまったのではないだろうか。その携帯を、一瞬壊そうと思っても壊せない亮。この及川親子が住んでいた場所は実際に最も大きな被害のあった地域の一つだったらしい。そんな経験をした人間が、歌の一つで素直に息子に向き合って「さあ、未来へ進もう」なんて簡単にできるはずもないわけで。従来のドラマならそういった展開は十分ありえるのに、『おかえりモネ』はその点が非常にリアルで、しかしそれでもその人の心に寄り添いたいというメッセージが周囲の登場人物によって体現されている。

 「多分あいつ、これから先なんども同じことするよ。酒も、やめるっていいながらきっと何度も今日みたいになる。でも、今日飲んでしまったなら、明日からまた一日目を始めたいい」という耕治(内野聖陽)の言葉。もとより難しいアルコール依存症の克服、それが震災の残した精神的な傷との繋がりによってさらに難しいものになっていたとしても、こんなふうに一人でも見捨てない誰かがいるだけで、新次の人生は大きく変わっていくはずだ。そして、幸いなことにそれは一人ではない。亜哉子(鈴木京香)も、永浦家全員もいる。そして何より、たった一つでも残った“財産”である息子、亮がいる。

■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。InstagramTwitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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