キャラ良し、アクション良し、筋肉良し! DCで最も純粋なエンタメ作品『アクアマン』

 海だ! 魚だ! 筋肉だ! 『アクアマン』だ! 『ジャスティス・リーグ』に登場していたアクアマンことアーサー・カリーが主人公の本作。ついに地上波初放送ということだが、続編となる『Aquaman and the Lost Kingdom(原題)』も先日から撮影が始まっていて、まさにグッドタイミング。ホラー映画の名手で知られるジェームズ・ワンが手がけ、世界興収は約1,279億円を記録し、DC映画の中で最もヒットした作品にとどまらず、全世界興行収入が歴代ランキングで23位という実績まで収めた。この『アクアマン』大ヒットの要因は、作品の軽快さとキャラクターの陽気さ、純粋なバトルアクションとしてのエンタメ性の高さにある。

 もともとアメコミ映画の中でもDCは“暗い”イメージを持たれている。クリストファー・ノーラン監督が描いたバットマンの3部作、特に『ダークナイト』の大ヒットもあり、トーンが重厚な映画作品寄りになったのかもしれない。2013年に公開された『マン・オブ・スティール』に始まるDCエクステンデッド・ユニバースは、その後も大人向けでシリアスな雰囲気のものが多いなか、『アクアマン』は子供から老人まで誰が観ても楽しめる、ものすごくシンプルに“カッコいい”映画として登場した。画面のトーンも海やサハラ砂漠、シチリアなど光の明るい舞台がたくさん出てくることで視覚的にも明るいし、そもそも主人公が明るい。

 アーサーは海底人と人間のミックス。母は海底国アトランティスの女王で、陸で残された父と二人で暮らしている。王座という権力には興味がなく、海賊に襲われた潜水艦を助けたり、父と仲良く地元で楽しんだり。助けを待つ人々の前に現れたとき、大概のヒーローが「俺が来たからもう安心しろ!」みたいなことを言うが、この人は「ハッピーアワーに遅れちまう」とビールのことしか考えていない。最高だ。飲み屋で写真をせがまれても承諾したり、なんなら一緒に飲んで騒いじゃうあたりが地元民に愛されている理由というか、とにかくチルい。ブルース・ウェインみたいに常に眉間にシワがない。隠れずに表立って活動している点、彼がヒーローになった動機も純粋に人助けをしているだけで、復讐心のような暗い感情からではない点でもバットマンとは対極的な存在だ。

 そんな魅力的な主人公を演じるジェイソン・モモアの色気も、本作の見どころだ。彼の隆隆とした筋肉は垂涎もの。エキゾチックな顔立ちが艶っぽいのに、子供みたいに笑う可愛さも兼ね備えている。それでいて性格が単にめちゃくちゃ良いやつなので、もうそんなのズルいの一言に尽きてしまう。この筋肉を存分に生かした、潜水艦という狭い空間での肉弾戦は見ていて爽快だし、場が広くなるとその分ダイナミックになる戦闘シーンも最高。ストーリー自体すごくシンプルで綺麗で、海底人などのファンタジー要素は見ているだけでワクワクするわけだが、アクションを含めそういった“観客が観たいもの”を全部観せてくれるのが『アクアマン』の一番良いところだ。

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