ジェイソン・モモアの魅力が爆発 絶対に観客を飽きさせない『アクアマン』の豪快さと緻密さ
アメコミ界の老舗・DCが展開する映画シリーズ、DCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)の通算6作目にあたる、『アクアマン』。2017年の『ジャスティス・リーグ』で銀幕デビューを飾ったジェイソン・モモア扮するアクアマンは、その名の通り、海中を猛スピードで移動する豪快なヒーローだ。しかし、同作ではクライマックスのアクションシーンが普通に地上だったこともあり、彼の真価を十二分に堪能することは叶わなかった。それもあってか、満を持しての主演作公開に向けて、アメコミ映画ファンの期待値は輪をかけて高まっていたことだろう。
実際に鑑賞してまず印象に残ったのは、映画全体が持つ壮大なスケール感である。それはもはや、「海」と一口に表現するのがはばかれるほど。
ドラマチックな情景の灯台、思わず見とれてしまうサハラ砂漠、潮の香りすら感じさせるシチリア島の街並みなど、様々なロケーションで観客を楽しませてくれる。また、海底に存在する巨大帝国の建築物や、その大きさに思わず目を見張る石像、クライマックスに登場する海底怪獣など、海という得体の知れない領域の「広さ」や「深さ」がスクリーン狭しと暴れ回る。ただVFXをペタリと貼り付けただけではない、奥行きと規模を実感させてくれる演出がとにかく尽きないのだ。
そして、そんな惚れ惚れするスケール感は、画のインパクトだけに留まらない。伝説とされるトライデントの存在をマクガフィンに据え、主人公・アーサーはメラ王女と共に、アトランティスの果てしない歴史を探求していく。まるで『インディ・ジョーンズ』のような、トキメキに満ちた冒険譚だ。
お話がややスローペースになったかと思えば、途端に爆発が発生し、敵の急襲が始まる。「絶対に観客を退屈させないぞ!」という意地にも似た何かを感じるほどに、とにかく前に前に話を転がし、停滞感を生まない作りになっているのだ。その大味さは、ともすれば粗を生みかねないが、なんのその、エンタメ作品としての潔さが全編に満ちているため、不思議と気にならない。それどころか、あまりの豪快なストーリーテリングに、それを是としてしまう世界観の器の大きさを感じるほどである。
一方で、所々の演出は実は非常に緻密で、言うなればクレバーな作品でもある。
冒頭10分で主人公の両親の物語(出会いから別れまで)を展開し、そのクライマックスでは、アクアマンの母・アトランナの計算されつくされた見事な「長回し風」アクションが披露される。ここでぐっと心を掴んだかと思えば、続く10分で、男と女のラブストーリーから一転、厚みを感じるギターサウンドを従えたアクアマンが豪快に海賊を討伐する。ここまでの冒頭約20分で、親子二世代の活躍を立て続けに描き、世界観の説明や物語のテイストを難なく観客の脳に刷り込んでいく。先の「大味さ」を成立させる仕掛けの一端である。