『賢い医師生活』シーズン2第2話、甘い声のキム・デミョンが歌う“世界が立ち返るべき真理”

『ミセン-未生-』

 寡黙ながらポツリとこぼす一言が常に的確なソッキョンを演じるのは、キム・デミョン。主に舞台や映画で活躍していたが、総合商社を舞台にしたドラマ『ミセン-未生-』(2014年)で主人公の先輩役を演じ、広く注目を集めるようになる。Netflixで配信中の『麻薬王』(2018年)では、ソン・ガンホ、ぺ・ドゥナ、『賢い医師生活』のチョ・ジョンソクとキム・ジュンハン、『ミセン-未生-』のイ・ソンミンと共演し、ソッキョンとは真逆のジャンキー役を演じている。最新出演作『国際捜査!』(2020年)では、クァク・ドウォンが演じる刑事の後輩で、フィリピンで観光ガイドを務める怪しい男を好演。演技だけでなくルックスも全く異なるこの映画の撮影から『賢い医師生活』までの間に、相当減量したことがわかる。2013年の映画『テロ、ライブ』には脅迫電話の声の主として出演。韓国映画振興協会による韓国俳優200名を紹介するサイト「The Actor Is Present」でも、ステレオタイプな犯罪人然とした声ではなく、少し高めの優しい声だったことが評判を呼んだと評されている。その声を活かしミュージカル出演歴もあるキム・デミョンが第2話のバンド演奏曲でボーカルをとり、1994年に歌手のユン・ドヒョンが発表した楽曲「Autumn Outside The Post Office(秋の郵便局の前で)」をカバーしている。

Kim Dae-myeung touches our hearts with his voice | Hospital Playlist Season 2 Ep 2 【日本語字幕 CC】

 バンドではキーボードを担当し、出演が決まった2019年の夏から「自分のせいでドラマを台無しにしてしまうのが恐かった」と小学生に混じってピアノ教室に通い続け訓練を積んだという。「秋の郵便局の前で」の「世の中に美しいものは、どれくらい残るのだろう。(中略)この空の下すべてのものが、自分1人で立っていられるだろうか」という歌詞は、どんなにつらい状況が訪れても家族や仲間の存在によって自分は立っていられるという、第2話で描かれる5人の友情、医師とレジデント、患者同士といった人間関係とリンクする。このテーマは、分断と格差がクローズアップされる世界において、人々がもう一度立ち返るべき真理だと言える。そして、名ドラマとしてタイトルが挙がる韓国ドラマには必ず、温かな人間関係と団結があることを思い出させる。

■平井伊都子
ロサンゼルス在住映画ライター。在ロサンゼルス総領事館にて3年間の任期付外交官を経て、映画業界に復帰。

■配信情報
『賢い医師生活』
Netflixにて配信中
写真はtvN公式サイトより

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