『世にも奇妙な物語 ’21夏の特別編』は粒ぞろいの放送回 加藤シゲアキらが見せる“生と死”

 昨年で放送開始から30周年を迎えた『世にも奇妙な物語』(フジテレビ系)。毎回多種多様なエピソードのオムニバスが展開してきたこのシリーズだが、昨年の秋に放送された『’20秋の特別編』では、学校や家族、職場、さらには独り身の主人公が通うコインランドリーと、まったく異なる4つのシチュエーションのもとで、それぞれのかたちで“他者との関わり方”を提示するようなエピソードが集められていた。これはコロナ禍という、他者との関わり方に大きな変化が訪れたタイミングに合わせてのことだろうか。

 6月26日に放送される『’21夏の特別編』で、主題として掲げられているのは「死」である。それだけ聞くと、なんとも暗いエピソードばかりなのかと思えてしまうが、決してそうではない。「死」の間際に見ると言われている「走馬灯」と、それを構成する主成分である「記憶」。いかにも『世にも〜』らしいシニカルさとファンタジー性を備えながら、あたかも「死」という極端な地点を視野に入れた上で、現在の(少なくとも放送を見ている人たちが進行形で享受している)「生」の時間をよりよくしていくか、見つめ直すかという命題を掲げるようなエピソードが紡がれていく。

『あと15秒で死ぬ』

 吉瀬美智子が主演を務める『あと15秒で死ぬ』は、榊林銘のミステリ小説を原作にしていることからもわかる通り、推理ドラマのテイストを梶裕貴扮する“死神”の登場によってファンタジックに見せるという、番組の導入としては十二分の引きの強さを持ったエピソードである。深夜の薬剤室で突然撃たれてしまう薬剤師の三上恵。時間が止まり、目の前に現れた死神は、15秒早く迎えにきてしまったというのだ。

 限られた15秒のカウントダウンのなかで、時計を止めたり動かしたりを繰り返しながら、犯人が誰かと、その動機について探っていく。死神のビジュアルもさることながら、その突拍子のない筋書きはなかなかにユニークであり、『世にも〜』のなかでも随一の名作『美女缶』を手掛けた筧昌也の『ロス:タイム:ライフ』を彷彿とさせるものがある。

『あと15秒で死ぬ』

 とりわけ近年の『世にも〜』では、原作を有する作品というのが良い存在感を放っている。ウェブコミックなどで、ユニークな設定をもつ短編作品が多く作られるようになったのがそのひとつの理由だろうか。『三途の川アウトレットパーク』は、まさにウェブコミック配信サイト「サンデーうぇぶり」に掲載された短編を原作としてエピソードだ。

『三途の川アウトレットパーク』

 三途の川のほとりで目を覚ました木村孝(加藤シゲアキ)は、来世のための“買い物”ができるというアウトレットパークで、生前病気で運動がまったくできなかったという少年(潤浩)と出会い、自分が生きていた頃に出会った芽生(島崎遥香)のことを思い出す。そして次第に、自分が生前犯した罪と向き合っていくのである。ここでもまた、原作の異質な設定と世界観に一方的に依存することなく、“生きること”への希望を見出すためのドラマ性を強調させていく。そういった点で、『世にも〜』らしい良質なエピソードといえよう。

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