川口春奈主演『着飾る恋』は『テラスハウス』のアンチテーゼだった!? 火曜ドラマの新境地
ここ数作の火曜ドラマのヒロインは、仕事でありえない失敗をしたり、信じられないほど鈍感だったりしたが、真柴は仕事に奮闘し結果も出し空気も読める、地に足の着いた女性。前述したように恋愛でも誠実で、駿が公園でお散歩デートをしようと提案しても、ちょっと不満そうに唇を尖らせるだけで、『テラスハウス』の女性たちのように、「そんなデートプラン信じられない」とルームメイトに愚痴ったりはしない。女性も男性も同じように仕事をし、同じようにデート代を支払い、仕事を頑張る権利も辞める権利もある。そんなジェンダーフリーな価値観を持った今どきの等身大の20代ヒロインだった。そのヒロイン像に、大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK総合)で織田信長をプロデュースする妻を演じた川口春奈がハマっていた。また、サブヒロインの羽瀬が女性の側から「結婚しよう」とプロポーズしたのも印象的だった。
ただ、リアリティを追求した作劇はインパクトが弱くなりがちだ。『リコカツ』の筑前煮女や、『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)でオダギリジョーの演じた小鳥遊の二重人格ぶりが話題をさらったように、非常識でありえない行動をするキャラがいたほうが、ドラマとしては盛り上がる。その一方で、『テラスハウス』的なわざとらしい演出は、SNS世代には見透かされ、「リアルじゃない」と避けられる傾向も。2021年4月クールには同じようにリアリティを追求し、厳しい現実を描いて、お笑い芸人が予定通り解散する結末を迎えた『コントが始まる』(日本テレビ系)もあり、地上波ゴールデンタイムのドラマ作りが転換点を迎えたように見える。この試みが主人公たちと同じ20~30代の視聴者の支持を得られるのか。この後に続くドラマに注目したい。
■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。
■放送情報
火曜ドラマ『着飾る恋には理由があって』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:川口春奈、横浜流星、 飯尾和樹、山下美月(乃木坂46)、 高橋文哉、赤ペン瀧川、丸山隆平、中村アン、向井理、夏川結衣
脚本:金子ありさ
プロデュース:新井順子
演出:塚原あゆ子
編成:松本友香、川島優子
主題歌:星野源
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
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