浜野謙太、俳優として個性派から実力派へ 『おかえりモネ』で見せる“大人”な存在感

 俳優・浜野謙太の、2021年における大きな仕事ふたつ、映画『くれなずめ』と『おかえりモネ』(NHK総合)の役には、共通点があるように思う。

 『くれなずめ』の曽川拓は、主人公の男たち6人のうち唯一の既婚者で、もっともちゃんと社会に出ている(この6人の中では、だが)、社会とコミットできている人。

 『おかえりモネ』の「翔洋さん」こと佐々木課長は、部下だが古参職員である川久保さん(でんでん)等に気を配りながら、モネをバックアップする、いわば「支える」人。

 つまり、大きく言えば、どちらも「大人側」であり、「常識側」のキャラクターである。

 これまでは、『まんぷく』(NHK総合)の牧善之介のように、「そこにいる時点でおもしろい」ことが求められる役や、映画『ロマンスドール』で演じた両角のように、物語にアクシデントを起こす役で重宝がられる、浜野謙太はそういう俳優である、という印象があった。

 その身体のフォルムや、顔や、表情や、セリフの言い回しや、動きなどが、観る者になんらかのフックを残す、キャラクターがはっきりした存在だから重宝されている、と、僕は思っていた。そんなような内容のテキストを、3年ほど前に、このリアルサウンド映画部に書いたこともある(参考: 『まんぷく』浜野謙太が大評判! “笑いを誘う”存在感がお茶の間に求められる理由?)。

 しかし、そのような自分の認識が、いつの間にかずれていたことに、『くれなずめ』と『おかえりモネ』を観て、気がついたのだった。そんな限定された役柄ではなく、もっとオールラウンドな役者として、さまざまな役で、あたりまえに作品に呼ばれる人になっている。

 たとえば、それら以外で、最近ハマケンがやった役。『DIVER-特殊潜入班-』(カンテレ・フジテレビ系)の潜入捜査課D班のハッカー、宮永壮一。『ディア・ペイシェント~絆のカルテ~』(NHK総合)の病院の事務局の人、沼田晋也。『おしゃれの答えがわからない』(日本テレビ系)の、主人公の木ノ宮茜(生見愛瑠)におしゃれを伝授するカリスマ美容師、マコト。

 どのキャラクターも違和感はなかった。マコトなんて「いや、ハマケンがカリスマ美容師て」と、最初は言いたくなったが、その役の姿かたちを観た段階で「あ、いそう」と思ったし、実際の演技もさらに自然で、さらに「いそう」だった。

 そう、「自然」が大きい。こういうコメディドラマの、こういう役柄を、こういう俳優が演じるとなると、もっとマンガっぽく大げさになったりしそうなもんなのに……いや、大げさじゃなくはないか。大げさではあるんだけど、その温度が「ギリセーフ」くらいの絶妙さだったのだ。

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