頑張った桃地には、神様から最後の“奇跡”が与えられた。巴の魂が一瞬だけ戻ってきたのだ。ウエディングドレスに身を包み、微笑む巴。

「最高！　大好き！　愛してる！」
「僕も巴さんに会えて、生まれてきた甲斐がありました！　愛してます！」

　生まれ変わったらまた会おうと約束した桃地と巴のキスシーンは、第7話を超える美しい場面だった。これが本当に最後の時間。悲しくてやりきれないが、巴があの世で「よみがえり抽選会」の一等に当たってマサオに憑依していたという事実が明かされ、笑みが溢れる。1年後、また何かの抽選に当たったのか前に進み始めた人たちを見守る巴の姿があった。

　いろんな姿になって魂は愛する人の近くにほんの一時戻る。そんなのフィクションだと一蹴するのは簡単だ。けれど、ふとこの世にはいない愛する人を思い出して足が止まる時、後ろからその人が「大丈夫だよ」と抱きしめてくれていたら。想像するだけで胸が熱くなり、いつもより背筋が伸びる。

　どこまでも優しくて愛すべきポンコツキャラの桃地を演じた松坂桃李、しなやかで麗しくキュートな巴を演じた麻生久美子、そして見る見るうちに可愛くなるオジ巴と冴えないマサオを見事に演じ分けた井浦新たちが作り上げた“奇跡”のようなドラマ『あのときキスしておけば』は私たちを笑わせ、同時にたくさんのことを教えてくれた。

　“あのとき～しておけば”と後悔しないように、今愛する人に思いを伝えよう。死という運命を背負った私たちの時間は限られているが、たくさんの思い出を天国に持っていけるように。そして、先に天国へ行ってしまった愛する人の魂がそばにいる気がしたら、桃地のように「おかえり」と変わらぬ笑顔で迎えてあげたい。

■苫とり子
フリーライター／1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。

■放送情報
『あのときキスしておけば』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15〜放送（一部地域で放送時間が異なる）
出演：松坂桃李、麻生久美子、井浦新、三浦翔平、岸本加世子、MEGUMI、猫背椿、六角慎司、阿南敦子、うらじぬの、角田貴志、藤枝喜輝、川瀬莉子、板倉武志、窪塚愛流
脚本：大石静
演出：本橋圭太、日暮謙、YukiSaito
ゼネラルプロデューサー：三輪祐見子（テレビ朝日）
プロデューサー：貴島彩理（テレビ朝日）、本郷達也（MMJ）
制作：テレビ朝日、MMJ
(c)テレビ朝日
公式サイト：https://www.tv-asahi.co.jp/anokiss/