北川景子が考える“家族”の在り方 『リコカツ』最終回は“そうきたか”と思える終わり方に

「家族に“ありがとう”と言いたい」

――北川さんは今回の役柄を演じてみて、自分の結婚観、離婚観、家族観について新たな気づきはありましたか?

北川: 脚本をいただいた時に“1カ月で離婚”という展開がとにかく衝撃でした。私の場合には、2人とも顔も名前も表に出ている職業ということもあって、離婚や万一不倫報道なんかが出た場合には結婚会見の映像が一生使われ続けるという重い覚悟の上で結婚したので(笑)、自分の結婚観とは全く違うものでした。ただ、やはり咲のように軽はずみに売り言葉に買い言葉で「離婚」とすぐに言っちゃいけないんだなと改めて思います。「離婚」ってそんな簡単にすぐに口に出す言葉ではないし、判子を押して届けを出してしまえばどんなに走っても間に合わない、ということでしょうか(笑)。私も第6話でめちゃくちゃ走ったのに間に合わなかったので。この10話を通して伝えたかったのは、夫婦の数だけそれぞれの夫婦の形があること、そして家族も同様に“これが完璧な家族、100点、理想”ということではなく、いろんな形があっていいんだよということだと思います。切っても切れない関係の家族だからこそ、他人よりも色んな問題があって大変なことも多いと思うんですが、でも家族だからこそ乗り越えられる問題や絆もあるんだなということが伝わればいいなと思います。

――2人が離婚に至るまでのいさかいやすれ違いは“夫婦あるある”なのかなと思います。共感できる部分はありましたか?

北川:私もお互いに仕事を持っている共働き夫婦なので、互いの仕事の“大事な時期”が重なってしまったり、夫が話したい時に自分が時間を取れないというシーンは、“共働きあるある”なのかなと思います。そんな時は私自身も“もっと話し合う時間がとれたらな〜”とか“今自分が仕事にかかりっきりで家族と向き合えていないよなぁ”と自己嫌悪になることもあったので共感しました。共働き夫婦がお互いの仕事を頑張っているとなかなか家庭に向き合う時間がとれない、かと言って家庭に尽力しようとすると仕事にしわ寄せが出てパンクしそうになったり……やはり仕事と家庭のバランスに悩む回はすごくリアルでした。夫にも向き合いたいけれど、担当している水無月先生(白洲迅)の方が外部の人だから優先して丁寧に対応してしまうシーンなんかは、“夫は家族なんだからわかってくれるだろう”とどうしても家族に甘えがちになってしまうことってあるなぁと身につまされる思いでした。演じながら自分も“気をつけよう”と思った回でした。

――咲が仕事で悩む部分が描かれていますが、北川さん自身もキャリアを積み重ねられる中で、咲の心情と重なる部分はありましたか?

北川:17歳でデビューして29歳で結婚するまでは、仕事一筋で生きてきて全く仕事で悩むことはなかったです。逆に1カ月間オフがあって何も演じていないと不安になるほどで。結婚後も2、3年は結婚前に決まっていた仕事が入っていたのでしばらくスタンスは変わらず仕事第一でした。ここ数年ようやく、自分の年齢もあって、子どもがいることもあり家族との時間と仕事のバランスについて考えるようになりました。子どもが生まれるまでは、お互いがお互いに忙しいのを承知の上で結婚したので、やりたい仕事があれば尊重し合って“海外ロケもどうぞご自由に”って感じで干渉し合わない同居人という感じでした。今回も産後初の連ドラ復帰できたのは、夫はもちろん家族総出で送り出してくれたからなので、自分自身も家族への感謝の気持ちが強くなりました。まずは家族に“ありがとう”と言いたいです。

――最後に最終話の見どころを教えて下さい。

北川:第9話で「やり直すために自分が変わるしかない」と言い合っていた2人が、本当に変われるのか。パリでの3年間の研修という話が持ち上がっている咲に対して、別居婚は避けたいという紘一の譲れない思いと、咲の仕事は捨てられない気持ち、そしてどちらか一方が自分が誇りに思う仕事を諦めるのも違うとなった時に、最後はどんなところで折り合いをつけるのか、どう2人がやり直そうとするのかが見どころだと思います。結局お互いのことが好きでお互いのことしか考えられない2人が、どうやってこの問題を解決していくのか。今まで男女の関係や仕事と家庭の両立をリアルに描いてきたドラマだからこそ、最後に“綺麗事”で終わらせるのは絶対に違うと自分たちもわかっていたので、皆さんにも“そうきたか”と思ってもらえるような終わり方を全員で作れたと思います。また、私自身これまで職業もので強いバリキャリ女性役が多かった中、ホームドラマは今回初めてだったので、等身大で人間らしい自然体な役柄を演らせていただけて難しかったんですが、“演って良かったな”と思える作品になりました。視聴者の皆さんが応援して下さって、よりこの作品を成長させてくれたからこそだと思っています。ありがとうございます。自分たちは観て下さる方のおかげで10話のマラソンをここまで走り切れたなぁと思うので、どうか最終話までお付き合い下さい。

■放送情報
金曜ドラマ『リコカツ』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:北川景子、永山瑛太、高橋光臣、白洲迅、大野いと、田辺桃子、中田クルミ、平岩紙、宮崎美子、酒向芳、三石琴乃、佐野史郎
脚本:泉澤陽子
演出:坪井敏雄ほか
プロデュース:植田博樹、吉藤芽衣
主題歌:米津玄師「Pale Blue」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作著作:TBS
(c)TBS

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