『きれいのくに』最終回が示した今を生きる希望 青木柚、見上愛ら高校生役5人が好演

 よるドラ『きれいのくに』(NHK総合)が最終回を迎えた。

 吉田羊、蓮佛美沙子、小野花梨が1人の女性「恵理」を「3人1役」で演じる1話から3話までの劇中劇。第4話からの「本章・高校生編」では、ほとんどの大人、その子供たちが同じ顔をした不条理な国に生きる誠也(青木柚)、凜(見上愛)、れいら(岡本夏美)、貴志(山脇辰哉)、中山(秋元龍太朗)、高校生5人が主役として描かれてきた。

 ナレーションは一切ないセリフのみで進んでいく難解なストーリー、挑戦的な構成・演出。『きれいのくに』は放送曜日を土曜日から月曜日に移動して最初の「よるドラ」として、確実にコアなドラマファンを虜にしてきた。だからこそ、どんな最終回になるのかが注目されていた。

 最終回では、高校生5人がそれぞれ自分の信じた一歩を踏み出していく。そこには突飛な演出はなく、高校生たちのリアルな心情だけがあった。

 凜は整形することを選んだ。一度は整形直前で逃げ出し、100%の当日キャンセル料を払ってまでも、まだ整形がしたいという思いが凜にはあったのだ。その凜を前に進ませるのは「好きな人の好きな顔になりたい」という願望。付き合うことになった誠也は「そもそもブスだって思ってない」「俺は別に凜の顔で好きになったわけじゃないから」と引き止めるが、凜の「じゃあ何が好きなの?」という返答で2人の会話は途切れる。凜が言っているように結局は自分の問題であり、自分の心の中に答えはある。互いに容姿にコンプレックスを持つ2人だからこそ、誠也は凜が整形することを最終的には後押しし、行動に移せる凜を羨ましく思ったのだろう。

 病室から出てきた凜の顔を見て誠也は「いいと思うよ」と声をかけた。凜の顔には笑みが浮かび、やがて瞳にはいっぱいの涙が溜まっていく。そこに後悔はなく喜びに満ち溢れた気持ちが見えるが、目を逸らす誠也の様子からはまだ受け止めきれない複雑な心情が垣間見える。「悪質な裏整形の客引きにご注意ください」というアナウンスやすれ違う警察官にも動じず、堂々と街を歩いていく凜。コンプレックスを抱え、どこか自信なさげだった以前の凜とは見違えるような姿だ。心の拠り所としていたクラブ「きれいのくに」のカードを折り曲げるのも、凜のもう一人で生きていける、誠也というパートナーがいるという自信の表れのように思える。

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