『コタローは1人暮らし』間宮祥太朗がキーマンに 川原瑛都×横山裕が身につける強さ

 「一緒に強くなるぞ」と力強く宣言した狩野もかっこよかったが、コタローの肩透かしの反応に「一緒に強くなろってさぁ……」と言い直した声が、情けなくて優しくて、狩野らしかった。「一緒に」と誓った夜の空には、ちょうどはんぶんの月が浮かんでいた。

 腹に思うところはあれど、誰の味方ということもなく、仕事は仕事として割り切る。それが青田だと思っていたのだが、名探偵コタローと狩野助手による推理が的中していたことには驚いた。父親に嘘の居場所を報告しただけに留まらず、青田には一本も二本もとられてしまった。

 青田がコタローの父親から請け負った依頼は、コタローの居場所を突き止めることだけ。わざわざ同じアパートに引っ越して、暮らしぶりを知る必要などなかったのだ。その事実に加え、コタローが早くから青田の正体を見抜いていたことを知った上で、改めて第5話を見返してみてほしい。気付かなかった青田の優しさや、コタローの言動に隠された想いが見えてくるはずだ。

 「本人が言いたくねえことわざわざ探んじゃねえよ」と狩野が言い切った場面も、身辺調査ではないと知ったあとならば、青田がひとりの大人としてコタローの1人暮らしを気にかけていることが分かる。たとえ方法は良くなかったとしても、青田が狩野に訊ねたことは、大人ならば心配して当然のことばかりだ。

 なにより、青田の「あわひげじいさん」を見たコタローの表情が忘れられない。驚き、そして嬉しそうだった。過去になにがあったとしても、きっとコタローは父親のことが好きなのだろう。強くなって父親に愛されたい、そうすればいつかまた一緒に暮らせると、今も信じているのだから。

 そんなコタローにとって、自分が「弱き者」であったせいで父親が悪者になってしまった過去は、さぞ辛いものだろう。田丸(生瀬勝久)が青田に詰め寄ったとき「青田どのをいじめるでない」と割って入ったコタロー。「弱き者」である自分のせいで、これ以上誰かが悪者になる姿を見たくなかったのかもしれない。

 自身の過去を重ねたのか、それともただ放っておけなかったのか、コタローを見て見ぬふりできなかった青田。「一緒に強くなる」という狩野とコタローの誓いを見つめ、安心した表情を浮かべていた。仕事の仲良しではなく「本当の仲良し」、そう言って差し伸べたコタローの小さな手を包み込む、大きな手のぬくもりと優しい笑みを残して、青田は『アパートの清水』を出て行った。

 次回は、美月(山本舞香)を守りたい、ずっと一緒にいたいと願うコタローが奮闘。予告編では、牛乳を飲むコタローを見つめる、狩野の優しい表情が印象的だった。印象的といえば、毎週登場する大家さん夫妻(イッセー尾形による1人2役)のひとコマ。ときにシビアな現実とも向き合わねばなるない本作において、クスッと笑えてほっこりする大家さんの日常は、ただただ癒しである。

■新 亜希子
アラサー&未経験でライターに転身した元医療従事者。音楽・映画メディアを中心に、インタビュー記事・コラムを執筆。Twitter

■放送情報
『コタローは1人暮らし』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:30~0:00放送
出演:横山裕、川原瑛都、山本舞香、西畑大吾(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、百田夏菜子(ももいろクローバーZ)、生瀬勝久、光石研、峯村リエ、大倉孝二、イッセー尾形、出口夏希
原作:津村マミ『コタローは1人暮らし』(小学館)(『ビッグコミックスペリオール』で連載中)
脚本:衛藤凛
音楽:篠田大介
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:都築歩(テレビ朝日)、尾花典子(ジェイ・ストーム)、松野千鶴子(アズバーズ)、岡美鶴(アズバーズ)
監督:松本佳奈 ほか
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日、ジェイ・ストーム
(c)津村マミ/小学館(『ビッグコミックスペリオール』連載中) (c)テレビ朝日

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