『ドラゴン桜』は日曜劇場“黒幕ルール”を継承? 生徒を取り巻く大人たちの思惑が鍵に

『ドラゴン桜』が継承、日曜劇場“黒幕方式”

『テセウスの船』『危険なビーナス』『天国と地獄』でも考察が過熱

 銀行を巡る不正を描いた『半沢直樹』は言うまでもなく、曲がったことが嫌いな銀行マンの主人公・半沢直樹と黒幕の最終対決が見どころだ。ただ『半沢直樹』の場合は黒幕の存在が比較的わかりやすく、黒幕を探すというよりはむしろ、裏切り者や悪役を出し抜いていかに勝利するかという点に注力されていた。

 一方、『テセウスの船』や『危険なビーナス』は視聴者も最後まで黒幕がわからない展開に。連続毒殺事件の犯人として逮捕された警察官の息子・田村心(竹内涼真)が事件直前にタイムスリップし、過去を変えようと奮闘する姿を描いた『テセウスの船』では、最終話で真犯人の共犯者がお笑いコンビ・霜降り明星のせいや演じる田中正志だったことが判明。共犯者を巡っては視聴者による考察が加熱していたが、せいやはドラマ初出演だったため、予想外の展開となった。

 『危険なビーナス』でも妻夫木聡演じる主人公の異父弟・矢神明人(染谷将太)の妻を名乗る楓(吉高由里子)の正体や、明人の失踪に関わる犯人の正体について考察が大盛り上がり。そして、女刑事・望月彩子(綾瀬はるか)とサイコパス殺人鬼・日高陽斗(高橋一生)が入れ替わる『天国と地獄〜サイコな2人〜』では、第9話で様々な伏線が回収され、最終話でのどんでん返しも予想されたが、意外にもすっきりとした後味のラストを迎えた。

大人も楽しめる『ドラゴン桜』に

 これらの考察ブームを巻き起こした日曜劇場の流れを引き継ぎ、令和版として生まれ変わった『ドラゴン桜』。見た目がチャラチャラしていたり、いい加減に見えて実は素直な良い子という前作の設定と真逆をいく、普通の高校生に見えて実は心に闇を抱えている生徒たちにも注目したい。元々ジャニーズ事務所に所属していた山下智久の後輩にあたる高橋海人、かつての長澤と似た立ち位置にいる平手友梨奈、新垣結衣と同じ事務所に所属する南沙良をはじめ、今注目されている実力派の若手キャストが熱演する生徒たちはそれぞれに悩みを抱え、故に間違いを犯すこともある。

「間違いを犯しても叱らず、目標すらも与えず、そんなんだからこのガキどもは濁ったドブ川みたいな目をしてるんだ」

 第1話でそう主張したように、今作では桜木が生徒たちを東大受験へと向かわせる前に、道を踏み出した彼ら、そしてその間違いを正すことから目を向けている大人たちをまるで半沢直樹のように容赦なく叩きのめすという展開が続いていくのではないか。その中で生徒たちは自分の人生に責任を持って向き合い、東大合格へと進んでいくのだろう。前作と同様にもちろん若年層も学園ドラマとして楽しめるが、悪の成敗と桜木を貶めた黒幕の存在によって大人たちも考察しながら没頭できる新しい『ドラゴン桜』に期待したい。

■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。

■放送情報
日曜劇場『ドラゴン桜』
TBS系にて、毎週日曜21:00~放送
出演:阿部寛、長澤まさみ、高橋海人(King & Prince)、南沙良、平手友梨奈、加藤清史郎、鈴鹿央士、志田彩良、細田佳央太、西山潤、西垣匠、吉田美月喜、内村遥、山田キヌヲ、ケン(水玉れっぷう隊)、鶴ヶ崎好昭、駿河太郎、馬渕英里何、大幡しえり、深田竜生(少年忍者/ジャニーズJr.)、林遣都、佐野勇斗、早霧せいな、山崎銀之丞、木場勝己、江口のりこ、及川光博ほか
原作:三田紀房『ドラゴン桜2』(講談社刊)
プロデュース:飯田和孝、黎景怡
脚本:オークラ、李正美
演出:福澤克雄ほか
製作著作:TBS
(c)TBS

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