新田真剣佑が近づける視聴者と作品の距離 『イチケイのカラス』恋と仕事の“分岐点”を学ぶ

 「右へ行くか、左へ行くかの分岐点に立たされている」という意味で、「Yってる」という造語が登場するだけでなく、まさに岐路に立たされていた石倉(新田真剣佑)に対して入間(竹野内豊)は「真実はひとつ。法廷はそれを明らかにする場。そして僕たちは、人の人生の分岐点に立ち会う仕事をしているんだ」と説く。この“分岐点”をキーワードに、思いも寄らない形で竹野内が以前主演を務めたドラマ『素敵な選TAXI』(カンテレ・フジテレビ系)とのリンクを感じさせた5月3日放送の『イチケイのカラス』(フジテレビ系)第5話。

 しかし同じ“分岐点”であっても、過去に戻る選TAXIは存在しないし、当然のように過去に戻ることも決してできない。そんな歯がゆさを刑事事件の審理と初恋の終焉を同時に重ねていくことで描き出した今回のエピソードは、リーガルドラマとしてはイレギュラーな立ち位置かもしれないが、連続ドラマのサイドストーリーとしてはなかなか魅力的に見える。そもそもこのドラマにおいて、入間と坂間(黒木華)という好対照かつ専門性を有した個性の強い2人に挟まれた石倉というキャラクターは、とくに視聴者に近しいポジションにあり、そんな彼が個人的な感情と全うすべき職務の間で板挟みにされる姿というのは、本ドラマの要である“裁判”というものをより日常へと近付けてくれる役割を果たしているといえよう。

 さて、今回描かれた事件は槇原エラーブルバレエ団の代表である槇原楓(黒沢あすか)が元トレーナーの矢口と揉みあいになり、階段から突き落としてしまったという傷害事件。そのバレエ団には石倉の初恋の相手である馬場恭子(生田絵梨花)が在籍していた。はじめは坂間が裁判長を務めて公判が進められていたのだが、その最中に入間から、彼が裁判長を務めた食い逃げ事件と併合審理にしたいという提案がなされる。食い逃げ事件の被告・元木(阿南健治)が、傷害事件の現場を目撃したというのだ。しかも元木の供述によれば、事件現場に槇原と矢口の他にもう1人いたというのである。

 もちろん今回のひとつのテーマとして掲げられる“併合審理”というのは、劇中にも説明があったように同じ被告による事件などをまとめて審理することなのだが、今回のように被告が異なる場合(しかも全く別の事件である場合)ではかえって審理が煩雑になりかねない。食い逃げ事件の被告が返済の意思を持ってした行動を証明することと、その被告が偶然目撃したという供述から、傷害事件の被告に偽証の可能性が見つかったことと、たしかに双方の繋がりは見受けられるが、それでもあえて併合審理に持ち込むというのはいささかドラマ的すぎるか。