『桜の塔』は“価値観の違う正義”を描く 脚本・武藤将吾×演出・田村直己が明かす

 毎週木曜21時より放送されているテレビ朝日系木曜ドラマ『桜の塔』。『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)の武藤将吾が脚本を手がける本作は、これまで犯人VS警察の構図を主軸に描かれることが多かった刑事ドラマを、桜の代紋を掲げる警察で巻き起こる“大乱”を抽出し再構築する、新たな警察エンターテインメントだ。

 今回、リアルサウンド映画部では、脚本を務める武藤と、演出を手掛ける田村直己にインタビュー。キャスト陣の印象や、今後の展開について話を聞いた。(編集部)

主役のために生まれてきた玉木宏

――玉木宏さんの印象を教えてください。

武藤将吾(以下、武藤):初めて作品をご一緒することになったんですけど、役に関して上條漣を演じてほしい僕の思いを伝えて、第1話を観た時に全て受け入れてくださったのを感じました。玉木さんが思い描いていた上條漣と僕がイメージしていた上條漣を合わせたというよりかは、僕の思いを咀嚼して、表現してくださっていたのが印象的でした。憑依型の役者さんって自分の方に寄せるタイプが多いんですけど、そうではなく役に対してアプローチしていく感じが僕にとってはありがたかったです。

田村直己(以下、田村):主役然としたオーラがあるし、この役をどう見せるかを考えて引っ張ってくれているので、現場的には助かるし主役のために生まれてきた玉木宏という感じがします。武藤さんが言ったように、憑依するというよりかは考えながらやって、それが後々全部繋がっているように見えるので。広末(涼子)さんがどっちかと言えば憑依型なので、そこの差が面白いかなって。2人がいい塩梅でフラットに見ながら、ちゃんと自分の役割を考えながらやってくださっています。

――広末涼子さんの印象はいかがですか?

武藤:一つ前の『ニッポンノワール-刑事Yの反乱-』(日本テレビ系)でご一緒した時も警視庁捜査一課の正義感溢れる刑事の役だったので、今回演じていただく際に悩ませてしまうかなと思っていました。僕の中では棲み分けができていて、爽は喜怒哀楽がしっかりとしたキャラクターで描いているんですけど、そこをきちんと理解してくださって、僕の中で2作品違う広末さんを見ることができたので、すごいなという印象です。

田村:第2話のラストシーンは漣と爽の価値観がぶつかり合う、ドラマ史上なかなかないシーンになりました。同世代の玉木さんと広末さんがドラマの中では同級生であり、幼なじみの役を演じていて、2人の相性の良さが出た場面です。広末さんは演技に集中し始めるとそこまで行くのかっていうくらいに、役に入り込んでしまう。そんな憑依型の広末さんの良さが第2話のラストでは結実していました。

――第1話では爽が漣の「デート」という言葉に、まんざらでもない表情を浮かべるシーンがありました。今後、この2人は恋仲へと発展していくのでしょうか?

武藤:単純に男女の関係ではない、刑事の使命を背負った2人が行き着くところになるんじゃないかなと。そこのゴールに関しては、もうなんとなくは見えています。ただ、2人がくっつく、離れるとか、それとも友情かといったところではなく、このドラマでしか成立しないような関係になっていくと思います。

田村:そう言いながら中盤戦でちゃんと、お互いが昔から好きだったけど、どうしても友達以上になれないというシーンが用意されていますので。

武藤:ありますね(笑)。

田村:より深い2人の関係性が見られると思います。

――上條漣の最大の特徴は、相手の表情や仕草、癖など細かな変化を見抜き、性格や内面を読み取るプロファイリング術です。これは武藤さんが描きたかった題材でもあるのでしょうか?

武藤:“どこまで人を分析できるのか”を、この物語で描いてみたいと思っていました。プロファイリングが漣にとっての指針であって、今は冷静な虎視眈々としたキャラなんですが、これからそうではなくなる時がやってきます。今は型にはまった自分を振る舞っているけど、そこの枠がどんどん外れていくのが、予想を超越してくる人間の恐ろしさを含めて、今作の見どころの一つになっています。漣がこれからどういった顛末を迎えるのかが物語のポイントになってくるのかなと思います。

田村:玉木さんは探っている感じが自然で上手いんですよ。爽やかな優しい眼差しの奥で、きっとみんなを観察しているのかなと。彼も常に人を見てプロファイリングしているんだと思います(笑)。面白い能力だと思うし、それを逆手に取ったことも出てきますので、武藤さんらしい脚本ですね。

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