倉悠貴、色気を放つ唯一無二の役者に 視聴者に刻まれた『おちょやん』ヨシヲの生き様

 寛治が千代に合わせる顔がない、千代のことを裏切ってしまったと嘆くと「裏切った」という言葉にヨシヲは反応した。あんなに面倒を見てくれた千代を裏切り、反対を押し切って満州に来たのに仕送りもせずに給金を博打と女に使ってしまったことを悔やみ、もう戻れないと言う寛治。ヨシヲは「そないなこと気にせんて、あの女優さんは」と言葉に確信をこめる。なぜなら、自分も千代に赦された過去があって今ここで生きているから。

 母の形見のガラス玉を右手で月にかざして「きれいやろ」「ほんまにお月さんみたいや」とヨシヲが寛治に託すシーンは幻想的で美しく、闇を照らすような千代の優しさを象徴するかのようだった。それまでずっと世話になって、千代の芝居の話をしながらも店長がヨシヲであることに気づかなかった寛治。ふいに千代の弟の存在を思い出したのは、彼がいつも泥酔していたせいだけでなく、ガラス玉に月光とヨシヲが受けとった愛情が映っていたからだろう。

 月光に映える儚くも色気を秘めた魅惑的な表情。発する台詞の説得力も含めて、ヨシヲ役として倉悠貴は強い印象を残した。

 2021年は出演作が相次いで公開になる予定で、『樹海村』、『まともじゃないのは君も一緒』、『街の上で』に続き、『衝動』、『うみべの女の子』が控えている。朝ドラで幅広い年代のファンの心を掴んだ今、俳優としてさらなる成長を遂げていきそうだ。

■池沢奈々見
恋愛ライター。コラムニスト。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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