「ひと狩り行こうぜ!」的な気軽さはない!? “ゲーム映画”としての『モンスターハンター』
ゲームは、プレイヤーの数だけ物語がある。これはポエムな話ではない。ストーリーで売るADVやRPGなどは別だが、物語性に重きを置かないゲームでは、しばしばプレイヤーが頭の中で物語を補完していく必要がある。『モンハン』でも、たとえば「モンスターの部位を加工する」くだりを考えてみてほしい。ゲーム内で部位を削り取る描写はアッサリ描かれるが、これを機械のパーツを外すような感覚で捉える人もいるだろうし、返り血を浴びながらグチュグチュと肉を切断していく様を詳細に想像する人もいる。恐らくアンダーソン監督は後者だったのだろう。そしてモンスターにも殺されまくって「この絶望感、この過酷さこそが『モンハン』の肝である!」と捉えたのではなかろうか。
本作が皆が思い描く『モンハン』として正解なのかは疑問が残る。過酷で陰惨すぎるし、広く知られている「ひと狩り行こうぜ!」的な気軽さはない。しかし、モンスター系サバイバルホラーとしては見せ場が詰まった秀作だ。何より『モンハン』の過酷な部分は完璧に表現できている。シリーズのファンよりも、むしろ「『モンハン』って難しくて苦手なんだよなぁ」と苦手意識を持っている人ほど楽しめるかもしれない。それはそれで問題がある気がするが、モンスターに無力な人間がブチ殺されるのを見たい人、それでも必死に抵抗するのが見たい人、必見である。
■加藤よしき
昼間は会社員、夜は映画ライター。「リアルサウンド」「映画秘宝」本誌やムックに寄稿しています。最近、会社に居場所がありません。Twitter
■公開情報
映画『モンスターハンター』
全国公開中
監督・脚本:ポール・W・S・アンダーソン
出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ、トニー・ジャー、ティップ・“T.I.”・ハリス、ミーガン・グッド、ディエゴ・ボネータ、山崎紘菜、ロン・パールマン
原作:『モンスターハンター』(カプコン)
製作:コンスタンティン・フィルム、テンセント・ピクチャーズ、東宝
配給:東宝=東和ピクチャーズ共同配給
(c)CONSTANTIN FILM Produktion Services GmbH
公式サイト:monsterhunter-movie.jp