実写版『モンハン』への布石 『バイオハザード』は壮大なホームビデオのはじまりだった
2000年代はゾンビ映画の豊作期だった。『ドーン・オブ・ザ・デッド』を筆頭に邦題が『なんとか・オブ・ザ・デッド』の作品がこれでもかというほど公開され、『28日後…』や『スリザー』のような、ゾンビ的に凶暴化した人々が襲いかかってくる作品もあれば、『ショーン・オブ・ザ・デッド』や『ゾンビーノ』のようなコメディチックなものもあった。しかし、その中でも『バイオハザード』は人気ゲームの実写化としても、正当なゾンビ映画としても仕上がりがよく、存在感を放っていた。2002年に公開された本作は、製作費約36億円に対し世界興収が約113億という大ヒットを記録している。
架空都市であるラクーンシティの地下にある機密地下施設ハイブ。そこでは巨大複合企業であるアンブレラ社が生物兵器Tウィルスを研究していたのだが、ある日事故が起きてウィルスが漏洩。感染したハイブの人間は脱出することも許されず、施設内で全滅。そこに、記憶をなくした主人公のアリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)と警察官を名乗る男、マット、そして特殊部隊の面々が、ハイブを管理する人工知能システム「レッド・クイーン」をシャットダウンするために施設に潜入する。監督は “じゃない方”という不名誉なレッテルでお馴染みのポール・W・S・アンダーソン。
1作目はゲームをベースにした作品であるものの、オリジナルキャラクターで構成されていて(隊員役のミシェル・ロドリゲスがいい味出している!)、いわばゲームのスピンオフ的な内容のものだった。しかし、随所随所のアクションシーンや施設のトラップなどにゲーム性を感じさせる。今でこそ“サイコロステーキ先輩”といえば『鬼滅の刃』の鬼殺隊隊士となってしまっているが、その元祖はまさしく『バイオハザード』シリーズで最も印象的なレーザー室のシーンでお陀仏となったワン隊長なんだぞと、今の小学生に教えてあげたい。(いや、『CUBE』の方が先だけど)
続編の導入部分まで見せたラストシーンが印象的な本作だが、まさかこの時『バイオハザード』が全6作品にもわたる大ヒットシリーズ、もとい壮大な愛溢れるホームビデオになるとは誰しもが思っていなかっただろう。
『バイオハザード』はポール・W・S・アンダーソンとミラ・ジョヴォビッチの愛の結晶
何を隠そう、ポール・W・S・アンダーソンとミラ・ジョヴォビッチは『バイオハザード』をきっかけに付き合い、結婚したビッグカップル。ポール・W・S・アンダーソンは1994年の『ショッピング』で監督デビューを果たし、翌年には『モータル・コンバット』で成功を収めた。すでに人気ゲーム原作×アクション映画で実績を積んだ彼は、『バイオハザード』初期ゲームシリーズをアパートにこもってやり込むと、これを映像化することを決意。そして、もとより映画化を企画していた本作の権利保有製作会社コンスタンティン・フィルムに自ら脚本を売り込んで2000年後半に正式に監督・脚本に任命された。
一方、その頃のミラ・ジョヴォビッチはというと、1999年に『フィフス・エレメント』がきっかけで出会い、結婚したリュック・ベッソン監督と離婚し、シングルに戻りたて。そして彼女も当時13歳の弟の影響で『バイオハザード』のゲーム(特に1作目)の大ファンであり、オファーを受けた際には「自分しか演じられる人はいない」と即決した。アンダーソン監督の方は、他にも複数の女優に声をかけて様子を見るつもりだったものの、ミラの熱意に負けて彼女に即決したそう。