ファイナルシーズン目前の『ウォーキング・デッド』 追加エピソードとは何だったのか

 ご長寿ゾンビドラマ『ウォーキング・デッド』も、ついにその10年以上にわたる長い歴史が終わろうとしている。先日、ようやく幕を閉じたシーズン10。前シーズンで登場した敵グループ・ウィスパラーズとの全面戦争がメインで描かれていたが、本来最終話になるはずだったエピソード16「絶体絶命」がコロナを含める諸般の事情による映像制作の遅延によって、本国での放送延期が発表された。そして16話はいつもなら新シーズンが開始される10月に放送され、その後2月よりシーズン10の追加エピソードが放送される異例の流れとなった。

 しかし、放送直後のファンの感想でも多く見受けられたように、それぞれの追加エピソードが正直スローテンポで、蛇足的な印象を持たせた。そもそもなぜこれらが追加で作られたのか、果たして必要だったのか、その意味について考えたい。

(※本記事には『ウォーキング・デッド』シーズン10追加エピソード全話のネタバレが記載されています)

ファイナル・シーズン目前にして、描ききれなかった登場人物の深堀り

 まずは、この追加エピソードの立ち位置についてだ。ショー・ランナーのアンジェラ・カーンはサンディエゴ・コミコン2020にて、この追加エピソードについて発表した際、「シーズン11が10月から放送できない代わりに、直結するボーナスエピソードを6つ用意した」と語っている。つまり、ボーナスエピソードといえど公式側は正式な“シーズン10の続き”と認識しているのだ。

ウォーキング・デッド シーズン10 追加エピソード – 予告編2 | FOX

 そして各話が、あるキャラクターにフォーカスを当てたフォローアップ的な内容となっているのが特徴的。追加エピソード1、第17話「我が家へ」は正式に合流したマギーと彼女の引き連れた仲間について描かれ、追加エピソード2の第18話「俺を見つけてくれ」では、リック不在になった後のダリルの動向が。追加エピソード3第19話「あと1カ所」は物資を探しにいくゲイブリエルとアーロンの様子が、追加エピソード4第20話「破片」は新キャラのプリンセスの視点を中心に、ステファニーと会う約束をしていた一向のその後が描かれた。そして追加エピソード5の第21話「分岐」では喧嘩したダリルとキャロルそれぞれにとっての“最悪な一日”が、そして追加エピソード6でありシーズンファイナルの第22話「ここにニーガンあり」では、ついにウォーキング・デッド史のなかで“大活躍”したニーガンの過去が明かされた。

『ウォーキング・デッド』シーズン10(c)2021 AMC Network Entertainment LLC. All Rights Reserved.

 17話では、ニーガンに殺されたグレンとマギーの間に生まれた息子ハーシェルが初登場する和やかさはありつつも、新たな敵「リーパーズ」の存在が示唆されたり、マギーとニーガンが再開したりと不穏な空気感が漂っていた。しかし、どことなく森を歩き回るシーンが長く、退屈さがあったのは事実だ。18話も相変わらずのスローテンポではあったが、リック不在の今シリーズの主人公的ポジションに落ち着いていたダリルに、一時期彼女がいたという衝撃的な事実が明かされファンが発狂する事態となった。このようにマギー、ダリル、キャロル、ニーガンといったお馴染みの人気キャラをより深堀りするため、そして登場して間もない新キャラの人物描写の意図があった、追加エピソード。プリンセスの回では、彼女がいかに幼少期のトラウマによる多種のメンタルイルネスに苦しんでいるかについて明らかとなった。

『ウォーキング・デッド』シーズン10(c)2021 AMC Network Entertainment LLC. All Rights Reserved.

 しかし、そんな中でも異彩を放っていたのがゲイブリエルとアーロンの回だ。メインではないが、長きにわたってシリーズに登場する二人の会話劇が中心の19話。これまた追加エピソードに共通する中弛み回と思いきや、突然暴力的な展開に発展し、視聴者を驚かせた。信仰を説く神父ゲイブリエルが、悪人を許さずに一切の躊躇もなく殴り殺す。それが当然であるかのように。初登場時に、あれだけウォーカーにもビビり倒してひ弱だった彼が、気がついたらこんな風になってしまっていた。そう、追加エピソードはファイナルシーズンに至るまでに、改めて振り返るべきキャラクターと、彼らの抱えていた問題を浮かび上がらせるような意味性をはらんでいる。

 夜、アーロンと仲良く談話する中で、再び住民に説教をしてくれと頼まれるゲイブリエル。しかし、彼の善悪の物差しは大きく変化していたことが、翌日わかる。ゲイブリエルの起こした殺人は、そんな彼が再び説教をする未来の可能性を打ち消すかのような暗喩にもなっているのではないだろうか。また、数々の死闘を遂げたアレクサンドリアの住民が、もうよそ者を一切信用しないという強さを得たことも象徴している。しかし、そこで以前よそ者をスカウトしていた立場、信じて仲間に引き入れていた立場のアーロンがゲイブリエルの対局として描かれた。この二つの思想が、ファイナルシーズンでどのように発展していくのか。