中川大志×石井杏奈、安心感のあった3度目の共演を振り返る “憧れの青春あるある”トークも
竹宮ゆゆこのベストセラー小説を、『弾丸ランナー』『蟹工船』『jam』の鬼才・SABU監督が実写映画化した衝撃作『砕け散るところを見せてあげる』が公開中だ。主演の中川大志と石井杏奈の2ショット対談が実現。人一倍正義感の強い男子高校生の清澄が、あるとき下級生の女子生徒・玻璃がいじめに遭っている現場を目撃したことから、玻璃を救おうと奮闘していく。清澄の存在で、笑顔が戻っていく玻璃だったが、実は誰にも言えない秘密を抱えていた。
新型コロナの影響により、1年の延期を経ての公開に至った本作。「あのときの自分たちだから演じられた作品」と語る中川と石井に、演じたキャラクターについて、初めて組んだSABU監督や、共演者の印象にはじまり、「過酷な撮影だったけれど、楽しかった」という現場のエピソードなどを聞いた。また、青春映画でもある本作にちなんだ「憧れの青春あるある」への質問では、中川の切ない思い出と、石井の憧れ胸キュンシチュエーションが明らかに。(望月ふみ)
「濃くて過酷で、楽しい日々でした」
――脚本を読まれたときの最初の印象を覚えていますか?
中川大志(以下、中川):もう2年も前のことですし正直、あまり覚えてないです。終わったあとは結構抜け殻で、幻の日々だったんじゃないかと思うくらい濃くて過酷で、楽しい日々でした。毎作品、やりきったという感覚はありますが、この作品を経たことは大きな自信に繋がりましたし、自分にとって今までに演じたことのない役だったと思います。
石井杏奈(以下、石井):私は最初、とにかく衝撃を受けました。想像していた内容と全然違っていて、でも愛おしくもあって。未知との遭遇のようなインパクトを受けたのを覚えています。演じ終えたときは、本当にやりきった感覚で、達成感と寂しさと、様々な気持ちが入り混じって。どのシーンも全部つらかったのに、なぜか楽しくて。現場がとても好きだったので、ロスになりました。写真を見たり台本を読み直したりして。
中川:僕にも会いたくなっちゃった?
石井:会いたくなっちゃいましたよ(笑)。
中川:すみません、ありがとうございます(笑)。
――とてもまっすぐなふたりでした。どんなことを芯として持っていましたか?
中川:ひとつ決めていたことは、玻璃に全集中ってことです。それがすべて。自分がどういう顔をするかとか、どういう風にセリフを言うかといったことは、極力捨てて行こうと。玻璃からもらったもので自分に何が起きるのかを大切にしようと思いました。だから一瞬たりとも玻璃の表情やサイン、変化を見逃さないように意識していました。
石井:私も清澄のことをずっと見ていました。現場でも傍にいるだけで落ち着きましたし、撮影期間は、そのときの“今”しか考えていなくて、このシーンが次のここに繋がるなど、これから後のシーンをどうしようといったことは考えずに、とにかく“今”のシーンを全力で生きよう、呼吸しようと思っていました。
クランクイン、クランクアップの思い出
――清澄と玻璃は、大きな不安や恐怖といった存在を「UFO」に見立てていました。ああした感覚は分かりますか?
中川:10代の頃とか、学生のころって、そういう感覚があったと思います。思い返すと、あれがなんだったのか説明できないんですけど、「これはなんなんだ。どうしたらいいんだ」という怖さが急に襲ってきたり。常にもんもんとしたものに囲まれていたり。僕はすごくあったと思います。
石井:UFOや、銀河など宇宙の話が出てくるのは、そう例えた方が楽になり、受け入れられるので、そうしているのかなと思いました。嫌なことや苦しいことが起こると、何かのせいにする。でも人のせいにはできないので、UFOのようなものにしてしまう。そういう部分はすごく共感できます。なにかのせいにすれば前に進めるという時期はあると思いました。
――クランクイン、クランクアップは覚えていますか?
中川:クランクインはトイレのシーンでした。よく覚えています。いじめに遭った玻璃がトイレに閉じ込められていて、僕が隣のトイレによじ登って上から玻璃を見つけるシーン。あそこが最初でした。夜の設定だったので、「寒い、寒い」とか言いながら、実は暑くて。
石井:昼は暑くて、夜は寒かったんだよね。
中川:そうそう。一番最初に見た玻璃が、水をかけられてビショビショの状態で、狭いところに閉じ込められている姿だったので、ものすごく印象に残っていますし、あそこから始められたのは良かったと思います。
石井:クランクアップは原田知世さんと北村匠海さんの撮影で、私と大志くんは朝から見学に行って、夜遅くまでずっとモニターの前で見てたんだよね。
中川:あれがクランクアップだっけ? 俺も?
石井:そうだよ。写真あるし、花束もらったもん。大志くんも。
中川:全然覚えてない(苦笑)。
石井:ふたりでずっとモニターの見られる場所で待っていて。出番がなくても、見届けたいと思えるすごく好きな作品でした。
中川:原田さんと匠海のシーンを、純粋に見たかったですしね。すごかったですよ。すごいキャスティングだと思いました。