松岡茉優×宮沢氷魚が語り合う、切磋琢磨する仲間の存在 『コウノドリ』以来の共演秘話も

宮沢「何かを成し遂げたいときは、何かを失う覚悟でやらないと」

ーー映画では、薫風社というひとつの出版社の中で、本来仲間である人間たちが生き残りをかけて騙し合いを繰り広げていきます。お2人は同じフィールドで活躍する仲間たちの活躍が気になったりしますか?

松岡:聞きたい! メンノン(『MEN'S NON-NO』)の! やっぱり比べられたりすると思うし。

宮沢:うん、すっごい気にする(笑)。

松岡:やっぱりそうなんだ! メンノン出身って錚々たる人たちがいるから、どうしても比べられるよね。

宮沢:それもあるし、映画とかドラマのオーディションに行くと、後輩とか先輩とかいるの。

松岡:そういうときってどういう感じになるの?

宮沢:普段はもちろん仲が良いんだけど、オーディションとかで会うと結構話せない。そこはライバルとして見ます。でも、誰がどういう作品に出ているかは、みんなすごく気にしますね。

松岡:えー! でも素敵な関係だね。

宮沢:そういう場があるのはすごくいいなと思います。僕は先輩よりも後輩に負けたくないので。

松岡:後輩ってたとえば誰がいるの?

宮沢:鈴木仁くんとか鈴鹿央士くんとか。

松岡:あぁー! そうなんだ!

宮沢:あの2人はなかなか気になる存在で。まあ先輩は先輩で、成田(凌)くんとか清原翔くんとかいるから、負けていられないんですけどね。

松岡:私もそんな仲間が欲しかったな。

宮沢:茉優ちゃんはそういう存在いないの?

松岡:高校時代に仲が良かったグループがあって、そこにももクロ(ももいろクローバーZ)の百田(夏菜子)とか朝日奈央がいて、いまそれぞれ別のフィールドで頑張っているから、その姿を見ると、負けていられないなと思う。2人とも仕事に対してすごく一生懸命だし、ちゃんとプロとしてお仕事をしているからこそ、すごく尊敬していて。2人が去年の年末に『ももいろ歌合戦』という音楽番組でコラボしていたけれど、そうやって2人が頑張っている姿を見ると、私も頑張らないと、と思うかな。2人とも本当にカッコいいから。

宮沢:へぇー! 同じクラスに有名人がいるって想像がつかないかも。

ーー先ほど同年代の俳優さんが少ないという話が出ましたが、同年代の女優さんは結構いますよね。松岡さんは同年代の女優さんの存在とかは気にならないんですか?

松岡:私は同年代よりも新しく出てくる女優さんの方が気になるかもしれないです。彼女たちは、かつて私が持っていたであろう気持ちや考え、年を重ねるにつれて私が失ってしまったかもしれないものも含めて持っていると思うので、たくましいなと思うし、私自身も身が引き締まります。昔は上ばっかり見ていたけど、年齢的に私もそういうふうに見られることを意識しないといけないので、恥ずかしい仕事はしたくないし、「あんな人になりたい」と思っていただけるように、より頑張っていかないといけないなと思います。

ーーそれこそ今回、松岡さんにとって出世作となった『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督と改めて一緒に仕事ができたのは大きかったのでは?

松岡:本当にそうですね。あれから8年も経っているのに、2歩とかしか成長していなかったら恥ずかしいし、申し訳ないし、ガッカリさせたくないなってすごく思っていて。吉田監督に、ちょっとでも「時間が経ったんだな」って思ってほしかったんです。でもこの前、吉田監督と2人で取材を受けたときに、「僕もそう思ってる。こっちもガッカリさせたくない」と言ってくださって。「ガッカリしませんでしたか?」って聞いたら、「もちろん。成長を感じた」って言ってくださったのがすごくうれしかったです。

宮沢:すごく素敵な関係性だね。

松岡:当時は16歳でしたから。あのとき吉田監督が私を見つけてくれなかったら、もう2~3年くすぶっていたんじゃないかな。『桐島、部活やめるってよ』で吉田監督に見つけてもらったから、いまがあると思います。

ーー宮沢さんはまだキャリア4年目ですが、現時点でターニングポイントになったのはどの作品ですか?

宮沢:え~、なんでしょう……いくつかあるんですけど、一番最近でいうと、去年やった二人芝居『ボクの穴、彼の穴。』ですね。

松岡:ああ、あれか! すごいことでしたね!

宮沢:すごいことでした(笑)。稽古も本当に大変で……。しかも、一度緊急事態宣言が空けた後の上演だったので、演出のノゾエ(征爾)さんも「みんな見る目が肥えているから、中途半端な芝居したらすぐバレるよ」っておっしゃっていて。自分の中ではまだ納得がいかない状態で初日を迎えたんですけど、50%だったり70%だったり入場制限がある中でも、お客さんがびっしり入るほど観に来てくださって、泣いてくださっている方もいたんです。その姿を目にできただけで、この仕事をやっていてよかったなと思いました。自粛期間中は仕事もなくて不安もあったし、このままこのお仕事を続けられるのかなとか、続けてもいいのかなって考えたこともあったんですけど、やっぱり劇場に足を運んでくれる人がいて、涙を流してくれる人がいるって思ったときに、この人たちのために頑張ろうって思えたんですよね。それまでは自分のために頑張っていた部分もあったんですが、あの作品を経験してから、皆さんに何か届けられたらいいなという気持ちが強まりました。

ーーこの『騙し絵の牙』も本来は昨年6月に公開される予定でしたがコロナの影響で延期になり、今回改めて公開を迎えることになりました。

松岡:私もこの1年、なんて無力なんだろう、何ができるんだろうってずっと思っていて、自分の無力さを痛感していました。この『騙し絵の牙』は、まさにそういった思いを抱えて、いま戦っている人たちの物語なので、何か生きていく上でのヒントがあったらうれしいですし、観ていただいたら勇気が湧く作品になっていると思います。

宮沢:大泉さんが演じる速水のやり方は賛否あると思うんですけど、彼はとにかくおもしろいことを追求して、自分のやりたいこと、届けたいことを一番に考えている人だと思うんです。それは皆さんにも共感できる部分があるんじゃないかと思っていて。何かを成し遂げたいときは、やっぱり何かを失う覚悟でやらないと、いいものって生まれないと思うので。僕はそれがすごく勉強になったし、この作品を通して、自分も生半可な気持ちでまあまあのものを作るのではなくて、全部を費やして、いまできる一番いいものを生み出したいと思えるようになりました。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記
※塚本晋也の「塚」は旧字体が正式表記

■公開情報
『騙し絵の牙』
全国公開中
出演:大泉洋、松岡茉優、宮沢氷魚、池田エライザ、斎藤工、中村倫也、坪倉由幸、和田聰宏、石橋けい、森優作、後藤剛範、中野英樹、赤間麻里子、山本學、佐野史郎、リリー・フランキー、塚本晋也、國村隼、木村佳乃、小林聡美、佐藤浩市
監督:吉田大八
脚本:楠野一郎、吉田大八
原作:塩田武士『騙し絵の牙』(角川文庫/KADOKAWA刊)
配給:松竹
(c)2021「騙し絵の牙」製作委員会
公式サイト:movies.shochiku.co.jp/damashienokiba/
公式Twitter:@damashienokiba

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