中村倫也、“守られたい”と“守りたい”を両立 理想的な実写『珈琲いかがでしょう』に寄せて

 中村がすごいのは自分が求められているキャラクターを瞬時に把握し、たとえ原作やあらすじなどの前情報がなくとも最初から“この人の過去には何かある”と思わせるところだ。元々彼が色気を持っていることもあるだろうが、直接的な描写や台詞なしでふと見せる哀愁漂う表情や、何かを諦めたような瞳からその人のこれまでを想像させる。

 今回演じる『珈琲いかがでしょう』の青山もイケメンで王子様のような気品ある佇まいだが、コナリミサトのキャラクターデザインに注目すると他のキャラクターに比べて青山は目の奥が真っ黒で表情が読みづらい。放送に先立ち公開された、青山の過去として描かれる金髪姿の中村を見ても口元はかすかに微笑んでいるものの、目は笑っていないのが分かるだろう。この青山がかなりのワケあり店主で、一杯ずつ丁寧に淹れた美味しい珈琲も相まって話も弾み、訪れる客は自ら悩みを吐露してしまうのだ。まさに数々の曰くつきキャラクターを演じてきた中村にぴったりの役どころと言える。

 そんな青山に傾倒していくヒロイン的立ち位置を今回担うのが、夏帆演じる客の一人・垣根志麻。誠実・丁寧・義理・人情がモットーで要領の悪さばかりが会社で指摘される彼女を筆頭に、コナリミサトが漫画の中で描くエグ味のある悩みに青山がスッと入り込み溶かしていく。志麻との恋愛模様も見どころだが、原作ファンが最も注目しているのは青山の過去パートだろう。磯村勇斗演じる、いかにも悪そうな謎の男が青山の過去を掘り起こしていくのだが、これがかなり壮絶。きっと今まで見たことのない、中村のゾクッとするような怖さを堪能できるはずだ。爽やかイケメンな顔と、客のトラブルに巻き込まれてあらゆる手段で危機を回避するお茶目な姿、そして大きな器と包容力で傷を癒す優しい一面とその裏にある暗い影。一つの作品で中村が何通りもの顔を見せる『珈琲いかがでしょう』から一瞬足りとも目が離せない。

■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。Twitter

■放送情報
『珈琲いかがでしょう』
テレビ東京系にて、4月5日(月)スタート 毎週月曜23:06~23:55放送
(初回~第3話は5分拡大で23:06~24:00放送)
出演:中村倫也、夏帆、磯村勇斗ほか
第1話ゲスト:足立梨花、貫地谷しほり
第2話ゲスト:山田杏奈、臼田あさ美
第3話ゲスト:戸次重幸、小手伸也、筧美和子、滝藤賢一、丸山智己
原作:コナリミサト著『珈琲いかがでしょう』(マッグガーデンコミックスEDENシリーズ)
監督・脚本:荻上直子
監督:森義隆、小路紘史
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:合田知弘(テレビ東京)、森田昇(テレビ東京)、山田雅子(アスミック・エース)、平部隆明(ホリプロ)
制作:テレビ東京/アスミック・エース
制作協力:ホリプロ
製作著作:「珈琲いかがでしょう」製作委員会
(c)「珈琲いかがでしょう」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/coffee_ikaga/
公式Twitter:@tx_coffee
公式Instagram:tx_coffee_ikaga

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