吉岡里帆が『レンアイ漫画家』でヒロイン役として帰還 映画・舞台での活躍にみる現在地

 それをもっともリアルに確認できるのが、上演中の舞台『白昼夢』である。吉岡が演じているのは、“ひきこもり支援団体”で働く女性。長年ひきこもっている男性(荒川良々)が自立できるように彼女は奔走するのだが、とうの彼女も問題を抱えている。劇中で深く語られるわけではないが、どうやら彼女も同じような経験をしているらしい。つまり彼女は、自身の問題を乗り越え、この男性の前に立っているのだ。

 ハツラツとした表情や、まるで自身の暗部を感じさせない立ち居振る舞いは、演じる吉岡自身の“強さ”が活きている。ところがこの女性、極度の緊張や恐怖を感じると精神状態が不安定になってしまう。筆者の座っていた12列目の席からでも分かる彼女の全身の震えと、止まらない涙。これは演劇作品なのだから、筆者は進行形でこの表現をする吉岡の姿を目の当たりにした。セリフで多くを語るわけではないが、過去に何かとてつもないことがあったのだと、そう観客に訴えかけてくるのだ。彼女はそんな過去を振り払おうとしているのか、演じる吉岡はここに“笑い”を重ね、結果、この女性の感情表現は“泣き笑い”となっている。

 本作は、三宅弘城、吉岡、荒川、赤堀雅秋、風間杜夫ら演技巧者による、少数精鋭の5人芝居だ。キャッチコピーには、「それでも生きていく。喜劇。」とある。この“喜劇”が成立するための重要なポジションを吉岡は担っているのだ。演劇界の大先輩である者たちに手を引かれるのではなく、この5人が並ぶことでしか成し得ない作品の一部分となっているように感じた。俳優・吉岡里帆の現在地だ。これには断然、次に彼女を観られる機会となる『レンアイ漫画家』が楽しみになってくるというものである。

■折田侑駿
1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、服飾、酒場など。最も好きな監督は増村保造。Twitter

■放送情報
『レンアイ漫画家』
フジテレビ系にて、4月8日(木)スタート 毎週木曜22:00~22:54放送
※初回15分拡大
出演:鈴木亮平、吉岡里帆、眞栄田郷敦、岩田琉聖、小西桜子、白石隼也、松大航也、奥平大兼、竜星涼、木南晴夏、片岡愛之助ほか
ゲスト:稲葉友
原作:山崎紗也夏『レンアイ漫画家』(講談社モーニングKC刊)
脚本:松田裕子
音楽:末廣健一郎
演出:石川淳一、小林義則、淵上正人
編成企画:佐藤未郷、江花松樹
プロデュース:小林宙
主題歌:佐藤千亜妃「カタワレ」(EMI Records)
オープニングテーマ:BiSH「ZENSHiN ZENREi」(avex trax)
制作:フジテレビ
制作著作:共同テレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/renaimangaka/

関連記事