『奥様は、取り扱い注意』『あな番』ーー劇場版ブーム再燃! ドラマと映画の関係は“変革期”に
2020年、新型コロナウイルスの感染拡大と、それによって相次いだ外国映画の公開延期。緊急事態宣言による映画館の休業も相まって落ち込みを見せていた映画界を『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』よりも先に救ったのは、『今日から俺は!!』と『コンフィデンスマンJP』であり、両者ともテレビドラマの「劇場版」である。コロナ禍の不安感を吹き飛ばすようなライトなコメディ作品が求められたということも考えられるが、それは同時に日本のテレビドラマが持つ“安心感”が大きく作用したということでもある。
現在は2017年にドラマ版が放送された『奥様は、取り扱い注意』の劇場版が公開されており、1月期に放送されたドラマシーズン3と連動する形で劇場版が製作された『バイプレイヤーズ』が4月7日から公開。2019年に社会現象を巻き起こした深夜ドラマの『きのう何食べた?』や、昨年秋のドラマシーズン2から続く新たな事件が描かれるのであろう『ルパンの娘』の公開も控えているなど、いままさにテレビドラマの「劇場版」ブームが再燃しているといっても過言ではないだろう。
2000年代の日本映画界を象徴する潮流のひとつだった「劇場版」がなぜ今ふたたび盛り上がりを見せているのか。その流れを辿りながら紐解いていきたい(便宜上、作品名は劇場版のタイトルではなくドラマ版のタイトルを用いることにする。長いタイトルが多いもので)。
「テレビドラマ」と「映画」の関係に決定的な転機をもたらししたのは、90年代後半の『踊る大捜査線』に他ならない。もちろんそれ以前、テレビドラマの黎明期から人気を博した作品の「劇場版」が製作されることは多々あって、そこにはやはり「ドラマが流行ったから映画でひと稼ぎをしよう」とする考えがあったものと見受けられる。とはいえ、『踊る〜』に関しては興行収入100億円を突破する歴史的な大ヒットとなり(さらに第2作でそれを更新する)、もはや単なるワンチャン狙いではなく、「エンターテインメント性の高いドラマこそ劇場版を作る価値があるのだ」ということを証明する。ドラマスケールを超えた特別なストーリーを、大スクリーンと高音質の空間でCMを挟まずに一気に堪能できるメリット。大劇場の混雑した空間で大勢で映画を観るという、テレビ鑑賞とは相反する空間だからこそ生まれる一種のイベントでもあるそれは、ドラマと映画両方にとって好ましいものとなるはずだっただろう。