『ワンダーエッグ・プライオリティ』に散りばめられた謎 野島伸司は“社会の闇”を描く

 2021年1月から放送をスタートしたアニメ『ワンダーエッグ・プライオリティ』(日本テレビ系)。社会問題を鋭い切り口で描いた『高校教師』(TBS系)や『家なき子』(日本テレビ系)などのドラマ作品で知られる脚本家・野島伸司が原案・脚本を手掛けた、完全新作のオリジナルアニメ作品だ。

 1990年代のTVドラマ界を牽引してきた野島伸司とタッグを組むのは、数多くのアニメ作品に携わる気鋭の演出家・若林信。制作は『約束のネバーランド』などで知られるCloverWorksが手掛けている。

 主人公は、不登校でオッドアイの少女・アイ。物語は、アイが深夜の散歩中に謎の声に導かれ「エッグ」を手にするところから始まる。翌日アイが玄関を出ると、なぜか見知らぬ校舎(=エッグの仮想世界)に辿り着いてしまう。謎の声に促されエッグを割ると、中には少女が入っていた。そして、エッグを割って少女があらわれると同時に「ミテミヌフリ」と呼ばれる敵が出現する。

 ミテミヌフリから逃げる2人だが、ミテミヌフリが襲うのはエッグの中の少女のみという事実を知ると、アイは逃げることをやめてしまう。屋上に辿り着いたアイは、そこで自殺したアイの親友・小糸(こいと)の彫像を発見する。親友を救えなかった過去を思い出し「もう見て見ぬふりはしたくない」と、敵と戦う決意をしたアイは、無事1人で逃げる少女を救うことに成功。そして、彫像が少し温かくなっていることに気づき、エッグの中の少女を救うことで親友が生き返るのでは、と考えたアイは、次のエッグへと手を伸ばしていく……。

物語の主軸は“いじめ”や“後悔”

 実はエッグを手にする少女はアイだけではない。他にも3人の少女がエッグを手にし、それぞれの目的のために戦う姿が描かれている。アイは自殺した親友のために、3人の少女たちも、各々の目的のためにエッグを手にしていく。

 物語の中でエッグを手にしているのは少女だけらしく、第4話では男子と女子では自殺の意味合いが違い、“感情脳”である女性には死の誘惑があり、その誘惑に惑わされて後悔している子を生き返らせたい人のためにエッグの世界が存在する、という事実が明かされる。

 目的脳である男子と感情脳である女子、自殺の意味合い、死の誘惑。野島伸司がこれまでに数多く描いてきた社会の闇は、アニメの世界でもしっかりと描かれている。

 アイの親友・小糸が自殺した理由を考察すると、おそらく原因は「いじめ」だ。転校生だった小糸はアイの代わりにいじめられるようになり、しかしアイは小糸へのいじめを「見て見ぬふり」をしてしまった。その後悔が、アイがエッグを手にする大きな要因となっているのではないだろうか。

 エッグの中の少女をミテミヌフリから守ことで、アイの後悔が晴れ、小糸の彫像に熱が戻ったのではないかと考えられる。あくまでも倒すべき敵は後悔やトラウマであり、特定の人物や団体ではないことも野島伸司らしい脚本になっているように感じる。

 アイ以外の3人の少女たちが抱える闇は、家族関係や同性愛、宗教といった問題だ。1つの作品でここまで様々な闇を描くことは、深夜のアニメ枠だからこそできる手法かもしれない。