『PUI PUI モルカー』は“約束された成功作”だった? 多くの人々を惹きつけた理由を考察

 これまでの作品を観ることで、モルカーたちがなぜここまで愛らしく表現できるかという謎も解けてしまう。見里が描いてきた小動物や無生物のキャラクターは、共通して、ひたむきな純粋さを持っている。そして、弱い立場で苦労している場合が多い。見里は、そんな弱いキャラクターたちの目線と、それらを優しく見守る姿勢で作品を作っている。その態度が、モルカーが実在していると思えるほどの迫真性を生み出しているのだ。アニメーションへの熱い情熱と、弱い者への共感を捨てない限り、見里は今後も優れた作品を作り続けていくはずである。

 昨年、これまでにストップモーション・アニメーションなど多くのアーティスティックなアニメ作家を育ててきた、広島国際アニメーションフェスティバルが、いったん長い歴史の幕を下ろした。それでも、このようなアニメーションを望む視聴者や観客は少なくないということが、『PUI PUI モルカー』のヒットで証明されることにもなったといえよう。本作の成功が、日本のストップモーション・アニメーション振興の大きな起爆剤となってくれれば、こんなに嬉しいことはない。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■放送情報
『PUI PUI モルカー』
テレビ東京系『きんだーてれび』にて、毎週火曜7:30〜放送
監督:見里朝希
(c)見里朝希JGH・シンエイ動画/モルカーズ

関連記事