『コロンバス』から『サマーフィーリング』まで 様々な愛のかたちで過ごす“優しい時間”

『コロンバス』などで過ごす優しい時間

『サマーフィーリング』(2015年/監督:ミカエル・アース)

 『オリ・マキの人生で最も幸せな日』と同じく16mmフィルムでの撮影。ただしこちらはパステル調のニュアンスカラーで、まるでリネンのようなざらっとした生地感の映像は、憂いを含んだ夏の空気と淡い光を映し出す。

 監督はフランスの気鋭、1975年生まれのミカエル・アース。これが長編第2作となり、続くテロ事件による悲劇を扱った第3作の『アマンダと僕』(2018年)で第31回東京国際映画祭のグランプリと最優秀脚本賞をW受賞した。大切な人を失ったあとの日々をどう生きるか――という喪失感をめぐる主題が両作に共通しているが、ウェルメイドな作りの『アマンダと僕』に対し、こちらはラフなスケッチ風。そのぶん愛と再生に向かう“フィーリング”が鮮やかに高い純度で伝わってくる。

 物語はベルリンで始まる。夏のある日、突然この世を去った30歳の女性サシャ。彼女の死をきっかけに、それまで交流のなかったサシャの恋人である作家・翻訳家のロレンス(アンデルシュ・ダニエルセン・リー)とサシャの妹・ゾエ(ジュディット・シュムラ)が出会う。やがて1年後のパリ。さらに一年後のニューヨーク。喪失を抱えながら過ごす三度の夏の光景が、優しく繊細なタッチで綴られていく。

 夏の映画、といっても涼しげなトーンが基調。フランスの避暑地アヌシー湖のシーンなどが美しく、全体に「喪のバカンス」といった趣だ。サシャ&ゾエ姉妹の母親役として、『緑の光線』(1986年)や『恋の秋』(1998年)などエリック・ロメール監督作の常連であるマリー・リヴィエールも出演。タヒチ・ボーイのアコースティックな音楽や、エンドロールに流れるベン・ワットの1983年の超名曲「ノース・マリン・ドライブ」が、マイナーコードな夏の哀感を詩的に響かせる。

 細野晴臣の「Honey Moon」のカヴァー(2018年にリリース)などで日本でも人気のあるカナダ出身のシンガーソングライター、マック・デマルコのクラブでのライヴシーンも必見だ。

ザ・シネマメンバーズで『サマーフィーリング』を観る

■森直人(もり・なおと)
映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『21世紀/シネマX』『日本発 映画ゼロ世代』(フィルムアート社)『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「朝日新聞」「キネマ旬報」「TV Bros.」「週刊文春」「メンズノンノ」「映画秘宝」などで定期的に執筆中。

■配信情報
『コロンバス』『オリ・マキの人生で最も幸せな日』『サマーフィーリング』
ザ・シネマメンバーズにて、2月より順次配信
ほか多数作品、ザ・シネマメンバーズにて配信中
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(c)2016 Aamu Film Company Ltd
(c)Nord-Ouest Films - Arte France Cinema - Katuh Studio - Rhone-Alpes
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ザ・シネマメンバーズ公式サイト:https://members.thecinema.jp/

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