篠田正浩監督×坂東玉三郎『夜叉ヶ池』4Kデジタルリマスター化へ 夏には劇場公開

 1979年に公開された篠田正浩監督・坂東玉三郎主演作品『夜叉ヶ池』が4Kデジタルリマスター化されることが決定した。

 本作は、幻想文学の礎を築いた泉鏡花の原作を、『梟の城』や『スパイ・ゾルゲ』などで知られる篠田監督が、1979年に取り組んだ意欲作。歌舞伎界を一世風靡していた女形の坂東玉三郎が初めて映画に出演し、村に暮らす女性の百合と夜叉ヶ池の竜神・白雪姫の一人二役を演じた。 共演には、百合の夫で鐘楼守として暮す晃役に加藤剛、晃の友人で失踪した晃の足跡を追う学者の山沢役に山崎努、白雪姫の眷属、湯尾峠の万年婆役に丹阿弥谷津子と、実力を備えた多彩で豪華な顔ぶれが勢揃いした。

 舞台は福井県と岐阜県の県境辺り。三国嶽のふもとの琴弾谷に夜叉ヶ池の伝説の調査に来た学者の山沢(山崎努)は、 迷いこんだ池のほとりで、息を飲むほど美しい女性と出会う。百合(坂東玉三郎)というその女性は、夫と二人で鐘楼守をしているという。家に招かれた山沢は、かつての親友で、夜叉ヶ池の調査に出たまま帰らぬ晃(加藤剛)が百合の夫であることを知り驚愕する。夜叉ヶ池には竜神が封じ込められていて、一日に三度鐘を撞かなければ竜神が再び暴れて洪水を引き起こし、村が流されてしまうため、鐘楼守をすることになったのだという。しかし、ある出来事がきっかけとなり、平穏な日々が破られることになる。

 脚本は、篠田監督とともに松竹ヌーヴェルヴァーグと称されたメンバーの一人で、多数の作品を手掛けた田村孟と、『天城越え』 などの監督作品で知られる三村晴彦。撮影は小杉正雄と坂本典隆、音楽はシンセサイザー音楽作家としても世界的に知られる冨田勲、美術はアーティストとしても名高く舞台美術でも著名な粟津潔、朝倉摂、横山豊と、錚々たる顔ぶれが集結した。

 権利関係の問題で、ビデオ化やテレビ放映がほぼできずにいたが、昨夏、篠田監督と坂東が再会した際に、 本作をぜひ今の人たちにも観てもらいたい、という二人の想いが一致し、このプロジェクトが始動。篠田監督の生誕90周年となる2021年、3月から衛星劇場での篠田正浩監督特集としてTV初放映を皮切りに、 今後スクリーンでの上映をはじめ、さらにBlu-ray化、テレビ放映、海外展開など、様々な特集が企画されている。

篠田正浩監督コメント

この新作『夜叉ヶ池』を観る人は、坂東玉三郎が、山崎努・加藤剛を相手に緊迫した現代劇を演じ、その果てに 魔性の姫に変化する見事な<女形>と、世界を圧倒した大洪水の<特撮技術>のお家芸が出会った日本映 画の奇跡を、その目で確かめてください。90歳でデジタル技術でよみがえった『夜叉ヶ池』の初日を迎える冒険を楽 しみにしています。

坂東玉三郎コメント

昨年の夏に篠田正浩監督と再会して『夜叉ヶ池』のデジタルリマスター化のプロジェクトが始まりました。デジタル化の 作業で映像を確認して、撮影当時の1つ1つの出来事を鮮明に記憶していたことに気づきました。それだけ思いを 込めて撮影に臨んでいたのだと思います。 泉鏡花「夜叉ヶ池」の世界をデジタル化により美しくよみがえった映像で皆さまに是非ご覧いただきたいと思います。

■作品情報
『夜叉ケ池』
3月 CS局衛星劇場にてTV初放送(2K放送)
※【『夜叉ケ池』放送記念 生誕90年 篠田正浩監督特集】と題し、『乾いた花』、『異聞猿飛佐助』、『あかね雲』も放送
夏、ジャパンプレミア上映 ユーロスペースにて篠田監督特集上映
夏、Blu-ray発売
海外映画祭出品予定

出演:坂東玉三郎、加藤剛、山崎努、丹阿弥谷津子
原作:泉鏡花
脚本:田村孟、三村晴彦、篠田正浩
監督:篠田正浩
製作:杉崎重美、富沢幸男、中川完治
撮影 小杉正雄、坂本典隆
特殊撮影 矢島信男
音楽 冨田勲
美術 粟津潔、朝倉摂、横山豊
(c)1979/2021 松竹株式会社

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