『おちょやん』笑いを媒介にして恋愛パートが進む 千代は大部屋女優の世界で大奮闘
1週ごとに舞台が変わる『おちょやん』(NHK総合)第32回。千代(杉咲花)は多くのことを吸収しながら自分の糧にしていく。鶴亀撮影所の大部屋女優になった千代だったが、やらかし続けて現場に呼ばれなくなってしまった。
大部屋女優の世界は厳しい。撮影所の中では弱い立場にあり、互いにライバルであるせいか気を許すような雰囲気もない。大部屋の中には明確な序列があって、役付きになるのを諦めてあからさまにサボる先輩もいる。大奥やオフィスで見られる光景がそこにはあった。新人の千代も洗礼を浴びせられ「暇な人がうらやましいわ」「自業自得や」と嫌味を言われてしまう。
仕事がなくなって普通なら途方に暮れてしまうところ、こういう時は手を動かすのが一番だと知っているのが千代だ。髪結いを担当する美髪部に出入りして、主任のたつ子(湖条千秋)に付いて見習いをスタート。シヅ(篠原涼子)、千鳥(若村麻由美)に続く当たりの厳しい上司にビシビシ言われながら仕事をこなしていく。そのうちに、大部屋の先輩である弥生(木月あかり)の窮地を救うことになり、「貸し借りなしや」で端役をもらうことに。互いに守り合う大部屋の絆が垣間見えた。
席もできて晴れて大部屋女優となった千代に新たな難題が突きつけられる。放送開始から1カ月半、これと言って浮いた話のなかった『おちょやん』で、監督の樋口(上杉詳三)に「恋心を知らんで役者が務まるか!」と言われて困り果てる千代。未来の夫・一平(成田凌)とは幼なじみの延長であり、出会いがありそうなカフェー「キネマ」では詐欺に遭うなど、千代は恋愛と無縁の人生を送ってきた。そういう人にいきなり恋心を理解しろというのは、かなり無理な注文に思える。
ドラマ自体も恋愛劇にいきなり入るのは難しいようで、やはりそこは笑いを媒介にして進んでいく。「今の彼で3人目」という真理(吉川愛)のアドバイスに従い、小暮(若葉竜也)に恋人役を頼むことになったのだが……。お笑いパートで流れる音楽からも察せられように、「恋人役」ではなく「恋人になってくれはれへんやろか」と勢いで告白してしまうのだった。
「あれ、千代って小暮のこと好きだったっけ?」と疑問符が浮かぶ間もなく、それを見ていた一平(成田凌)の表情がなんだかすごいことになっていて、今日もちゃんと笑わせてくれた『おちょやん』。エア失恋した宮元店長(西村和彦)と平田(満腹満)はご愁傷様でした。
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログ/Twitter
■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/