木村拓哉の演技の円熟味を堪能 『教場』前作を再放送で振り返る 

木村拓哉の演技の円熟味を堪能 『教場』前作を再放送で振り返る 

 2020年の正月に「新春3夜連続木村拓哉スペシャル」と銘打って、木村拓哉が初めて刑事役に挑んだ映画『マスカレード・ホテル』とともに放送されたスペシャルドラマ『教場』(フジテレビ系)が、年明けに放送される続編に向けて2夜連続で再放送。長岡弘樹の同名小説シリーズを原作とした本作は、“ふるいにかけられる場所”である警察学校を舞台に、冷酷で卓越した観察眼を持つ鬼教官の風間公親(木村拓哉)と、彼が教える“風間教場”の生徒たちを中心とした物語だ。

 12月29日に放送された「前編」では、第198期の生徒たちと風間との出会いから、風間教場で起きる3つの事件が描かれていった。日々厳しいルールのもとでトレーニングに励む神奈川県警察学校初任科第198期短期課程、植松教場の生徒たち。入校から1カ月が経ったある日、教官だった植松(筧利夫)が入院。その代理として現れたのは人を寄せ付けない冷徹なオーラを放つ風間だった。元小学校教師で、過去に警察官に助けられたことから憧れを抱くようになった宮坂(工藤阿須加)は、授業で真面目に職務質問の練習を行わなかったことを風間に見破られ、退校届を突きつけられる。そして“課題”として、同期の生徒たちに不審な動きがないかを監視する役目を任されることになるのだ。

 教壇に立つやいなや、生徒たちの背筋を正させるような鋭い空気が流れる。そんな風間公親というキャラクターは、たしかにこれまで木村が演じてきたどの役柄とも異なって見える。そして半ば機械的に「君にはここをやめてもらう。サインして持ってこい。いつにする? 明日か明後日か、なんなら今でもいい」と退校届をちらつかせるそのそぶりは、“陰”でも“陽”でもなければ“善”でも“悪”でもない、さながらサイボーグのようにフラットな存在だ。それでも宮坂が巻き込まれる、平田(林遣都)が引き起こした硫化水素心中未遂や、楠本(大島優子)と岸川(葵わかな)の一件、そして樫村(西畑大吾)によって日下部(三浦翔平)が陥れられる一件などを通して、徐々にその素性が見え隠れしていくわけだ。

 この前編で描かれた3つの事件、いずれも当事者の生徒のどちらかは教場を去り、もう一方は教場に残ると同時に、風間が単に機械のような鬼教官ではないことを薄々と感じ取っていく。いくつものピースをすぐさま頭の中でつなぎ合わせ、その後に起こりうる出来事を判断する洞察力を持つ風間の視点から物語が進めば、ある種のミステリードラマになりうるところを、あえて風間の存在そのものをミステリーに仕立てることによって、生徒たちという“ピース”にドラマ性が与えられていくといったところか。君塚良一の安定した脚本や、木村拓哉という唯一無二の俳優を知り尽くした中江功の演出によって、円熟味にあふれた木村の演技を味わえるというのはなんとも贅沢な作品に思える。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる