波瑠×松下洸平は“答え”を導き出せるのか 『#リモラブ』が描く“家族”になることの難しさ

『#リモラブ』が描く家族になることの難しさ

「問題はその先だ。心と心が繋がっているか。それは、お互いをよく知るってこと。とても簡単で、とても難しいこと。面倒なことでもある」

 『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ)第7話で江口のりこ演じる富近が言った言葉がここに来てグサグサと胸に刺さってきている。それぞれイチャコラしながら順調にいい方向に進んでいるように見えていた、優しい人たちの恋と友情が、ここにきて波乱の展開を迎えている。

 美々(波瑠)も青林(松下洸平)も、五文字(間宮祥太朗)も、「普通の恋は邪道」と言っている私たちは、たぶん皆不器用だ。バブリーな花束やネックレスを贈り、「今日泊っていきなよ」とスマートに誘える「昭和の男」及川光博演じる朝鳴と、富近のカップルが燦然と輝いて見えるように。SNSはじめ様々な便利な手段に囲まれて生きる私たちは、なんでもそれらに依存してしまいがちで、いろんな顔を使い分け、小器用に人と関係性を築くことができたとして、誰か一人と深く関わろうとしたところで躓く。

 美々と青林は、SNS上で「草モチ」と「檸檬」として知り合って、現実世界でも互いの心の中から離れない、毎日「好きだったな」と思い返す存在になったのに、これ以上何がいるのだろう。第9話では、「濃厚接触」を期待してもキスにさえ至らず、互いに結婚を意識しているにも関わらず美々の期待が異常に高まるだけでことごとくすれ違う、ままならない2人が描かれた。

 なぜ、彼らは前に進めないのか。彼らは、まず互いを心の底から分かり合いたいからだ。心と心を100%分かり合った上で濃厚接触したいし、結婚したい。美々は、マスクも「草モチ」も、「産業医としての大桜美々」も「頑張り過ぎてしまう大桜美々」も取っ払って、ありのままの「生身の自分」をそのまま受け止めて、抱きしめてほしいのだろう。

 これまでは、SNS上の「草モチと檸檬」としての会話か、「美々と青林」としてのリアルな会話かという段階だった。ようやくリアルな会話で愛を育むようになった2人は、さらに「その先」である「心と心」の会話をしようと試みる。

 第9話において、美々は「こんな風に喋ってても、心の中では違うことを考えてたりするでしょ」と言う。その「青林には全く聞こえていない、でも視聴者はずっと聞いてきた、美々の毒あり、無邪気あり、時々とんでもなく勘違いばっかりしているお茶目な心の声」は、SNS上の会話や、リアルな会話以上に、ドラマ全体を形作っていたものだった。その彼女の本質ともいうべき「声」を、まだ当の青林は知らない。

 だから、ストレスによる円形脱毛症問題もあり、美々は「心の声」を外に解放しようとする。でも、いざ外に出してみると、予想とは違う答えが返ってきたりして、美々はちょっと変な顔をする。期待と現実があまりにも異なり、プロポーズされるのだと浮かれていた美々と、嫉妬にかられて黙り込んでいただけだった青林という、尋常じゃなく離れた心の距離に気づき愕然とする。

 今までSNSを通して、当初は素性も知らない者同士「心と心の会話」他愛のない会話をして互いを深く理解し、心の中に存在すると思うほど近くに、相手を感じていた彼らは、それがまやかし、富近が言うところの「浅瀬でパシャパシャやって泳いだ気になっているだけ」に過ぎなかったことを本当の意味で知ったのだった。

 しかも、その美々の「過度な期待」の原因となったのが、青林のことを知りたいばかりに、SNSの先にいた「檸檬2」こと五文字に相談するという「手軽な手段」に飛びついたことにあり、青林が、そのやり取りを知ってしまったことで嫉妬に駆られ、プロポーズを取りやめるに至ったというところがまた、絶妙である。

 ここにきて恋のライバルとして再浮上した五文字。美々に片思いし続け、それでも大好きな友人、青林とうまくいってほしいと心から願っている、社内イチの癒し系男子。実は自分と同じでストレス耐性がない美々のことを誰よりも理解し気遣っている。

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