『スカーレット』子役・毎田暖乃が豪快なアドリブを披露 朝ドラ『おちょやん』がスタート

 昭和の名女優・浪花千栄子を題材に、大阪の貧しい家に生まれた少女が女優を目指す生涯を描いたNHKの連続テレビ小説『おちょやん』が第1週初日を迎え、主人公・竹井千代の子ども時代を演じる毎田暖乃の演技が光る回となった。

 大正5年。千代は飲んだくれの父・テルヲ(トータス松本)と弟・ヨシヲ(荒田陽向)と暮らしていた。千代とヨシヲが鶏の世話をする中、朝っぱらからお酒を飲み続けるテルヲはまさに朝ドラ名物な“ダメおやじ”。しかし千代はそんなテルヲに困り果てるのではなく、真っ向から彼を叱り飛ばす。千代に押され気味なテルヲは「親に偉そな口たたきさらすな!」と言い返すのだが、千代は母・サエ(三戸なつめ)とした「ヨシヲと家を守る」という約束を胸に決して姿勢を崩さなかった。

「親やったら親らしいことをさらせ!」

 番組公式Twitterによると、テルヲを思い切り蹴っ飛ばすのは、千代を演じる毎田のアドリブ。豪快なワンシーンだが、鶏の世話も家事もしない父とまだ幼く、お腹を空かせてばかりいる弟のために、家を支えようとする気概が感じられる。

 毎田の演技がみせるのは千代のたくましさだけではない。生活への苦労や母を亡くした寂しさも感じられる。鶏を売りに家を出たテルヲを見送った千代は、力が抜けたようにその場に横たわり、少し弱々しい声で「はぁ…ほんま生きるてしんどいなぁ」と口にした。小学校へ通う同じ年頃の子どもにからかわれたときには「何や、うるさいねんボケ!」と言い返し、お隣さんに同情されたときには「うちはかわいそやない!」と声をあげた千代だが、あの勝気な姿は、弟と家を守るために気を張っているだけなのかもしれない。ヨシヲから「姉やんはお母ちゃんやない」と言われた千代の、一人考え込むような、どことなく寂しげな表情も印象に残る。千代は母からもらったビー玉を見つめ、もう一度「うちはかわいそやない」と言った。自分にそう言い聞かせることで、前を向こうとしているように見え、切ない。

 千代を演じる毎田は、前々作『スカーレット』で主人公・喜美子(戸田恵梨香)の親友・照子(大島優子)の長女・雪子を演じていた。見覚えがあった視聴者も少なくないはずだ。そんな毎田は第1話から、父親に啖呵を切る力強さと家族を思う千代の繊細な感情をみせ、視聴者を『おちょやん』の物語へと引き込んだ。毎田が登場するのは「最初の2週間だけ」とのことだが、杉咲花演じる千代の土台をつくりあげる物語に期待が高まる。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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