“食べ物ドラマ”になぜハマってしまうのか 『孤独のグルメ』を筆頭に求め続けられるその理由

“食べ物ドラマ”が求め続けられる理由

 元祖と言われる『孤独のグルメ』(テレビ東京ほか)を源流とする食べ物ドラマは、昨今、様々なジャンルにバリエーションを拡げている。2021年1月からは、激辛料理をテーマとした、桐山照史(ジャニーズWEST)主演ドラマ『ゲキカラドウ』(テレビ東京ほか)が放送される。

 ここまで裾野が広がると流石に飽きられやしないかと思うところだが、食べ物ドラマは奥が深い。ありとあらゆるニーズにヒットして、新たな定番が次々に生まれている。今回は、なぜ我々が食べ物ドラマにハマってしまうのかという疑問を解決するべく、その魅力を考察すると共に、今後の可能性を探ってみたい。

「美味しい」の感覚は万国共通

 「食べること」は常に、我々の日常の延長線上にある。恋愛ドラマに刑事ドラマ、医療ドラマと、ドラマには様々なジャンルがあるが、食べ物ドラマほど、世代や性別を問わず、全ての人の日常と直結したドラマはない。

 食べ物ドラマは、視聴者とドラマ上の登場人物との心の壁を取っ払う力を持っている。例えば、韓国ドラマ『愛の不時着』(Netflix)の何が素晴らしくて世界中でヒットしたかと言うと、「食」のドラマでもあったからだ。北朝鮮と韓国という対立し合う国で生きる人々が心を通わせていく、恋に落ちる物語の中心にあったのは、焼きハマグリやフライドチキンといった美味しそうな食べ物の数々だった。そしてその「美味しい」の感覚は万国共通であったために、世界中の人々の心に届いた。

 その点を極めた傑作と言えば、『きのう何食べた?』(テレビ東京ほか)である。西島秀俊と内野聖陽演じる同性カップル、シロさんとケンジの日常を、彼らが食べる料理を中心に描いた。このドラマの料理の素晴らしさは、身近な食材と調味料でできるということ。劇中でしっかりレシピを教えてくれるため、すぐさま真似して次の日の夕食にしたくなった人も多かったのではないだろうか。気づいたら、同性カップルを描いたドラマとして色眼鏡をかけて見るのではなく、彼らがぶつかる様々な問題を含めて「家族になること」とは何かを考えさせられた。同様のことは『深夜食堂』(TBS系/Netflix)に関しても言える。

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