『呪術廻戦』は『鬼滅の刃』に続くヒット作になるか? TVアニメに仕掛けられた工夫から紐解く

 内容は深夜帯の作品らしくハードでシリアスな展開が続く。虎杖悠仁は身体能力は異常に高いものの、それ以外は普通の少年だ。第1話において特に強い力を秘めていると言われる特級呪物である両面宿儺の指を食べてしまい、その体内に宿してしまうことになる。強力ながらも狡猾な悪である両面宿儺が出てくることにより、圧倒的な力で敵を倒す代わりに、仲間にも危害を加える可能性がある。時には腕の欠損であったり、また第5話においては、心臓がそのまま出てくるなどのハードな描写がある。この辺りは近年のジャンプ作品では、深夜帯の作品ならではの描写ということになるだろう。

 また、テレビアニメでは1つの区切りとも言われている第3話のラストにおいて衝撃的な文言が並ぶことで、視聴者を取り込む工夫が凝らされている。第3話は全体的にメインキャラクターの深堀りの回であり、ほっこりとした内容の後にこの文言を入れてくるところに今作の方向性が窺えるだろう。EDのお洒落さは、そのままでは重すぎる作品内容を和らげることにも効果を発揮しているようにも感じられる。

 一方で、シリアスやダークさだけが売りの作品ではない。第1話において虎杖悠仁の祖父の死が描かれているが、そこで初めて人の死に触れたことにより、誰かに害されることなく、寿命などでこの世を去ることを目的とする姿も描かれている。どうしても芽生えてしまう戦いや呪霊に対して、あるいは自分の中にどうしようもない悪党がいることへの恐怖を感じながらも、祖父の言葉を胸に自らを鼓舞して、多くの人を守るために動く姿などに少年漫画らしさがあり、ダークながらも王道な作品と言えるだろう。

 今では配信サイトも充実しており、深夜帯の作品であっても多くの人が観ることができる時代となった。現在爆発的ヒットを記録している『鬼滅の刃』などの例があるように、視聴層が深夜アニメを視聴するアニメファン層以外にも広がれば、大きなヒットを記録するだろう。子どもたちに見せるには少しグロテスクな表現が多いようにも感じられるが、『週刊少年ジャンプ』で人気を博した作品でいえば『北斗の拳』など、昔からゴア表現が取り入れられている作品が子どもたちにヒットする例も多い。作品内容も含めて、注目ポイントが多い作品だ。

■井中カエル
ブロガー・ライター。映画・アニメを中心に論じるブログ「物語る亀」を運営中。平成アニメの歴史を扱った書籍『現実で勇者になれないぼくらは異世界の夢を見る』(KADOKAWA刊)が発売中。@monogatarukame

■放送・配信情報
『呪術廻戦』
MBS/TBS系“スーパーアニメイズム”枠にて、毎週金曜深夜1:25〜放送
Amazon Prime Video、Netflixほかにて、毎週金曜26:00〜順次配信
声の出演:榎木淳弥、内田雄馬、瀬戸麻沙美、
小松未可子、内山昂輝、関智一、津田健次郎、岩田光央、遠藤綾、黒田崇矢、中村悠一、木村昴、井上麻里奈、赤﨑千夏、麦人、山谷祥生、櫻井孝宏、千葉繁、田中敦子、島崎信長、諏訪部順一
原作:『呪術廻戦』芥見下々(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:朴性厚
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史
副監督:梅本唯
美術監督:金廷連
色彩設計:鎌田千賀子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:兼田美希、木村謙太郎
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介
音楽:堤博明、照井順政、桶狭間ありさ
音響監督:藤田亜紀子
音響制作:dugout
オープニングテーマ:Eve「廻廻奇譚」(TOY’S FACTORY)
エンディングテーマ:ALI「LOST IN PARADISE feat. AKLO」(MASTERSIX FOUNDATION)
アニメーション制作:MAPPA
(c)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
公式サイト:https://www.jujutsukaisen.jp/

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