動画配信サービスQuibi失敗のワケ スマホ動画に必要なのは品質ではなく“良さげな雰囲気”?
パンデミックでなかったら流行ったのか
これについては誰もわからないが、スマートフォンベースのサービスでかつ「横向きモード」「縦向きモード」の両方が楽しめるドラマを売りにしていた点はどこかで限界が来ていたに違いない。タイミングの問題ではないように感じる。先ほど述べた通り、SNSでバズる動画は素人がなんだか楽しそうにしているものばかり。決してアカデミー賞を獲ったプロの監督が作ってるわけではない。プロが製作したからバズると言うわけではないのだ。この“なんだかよさげなバイブス”があるものが圧倒的にミームになりライバルになる2020年のスマートフォン動画において、スマートフォンベースを最大の売りにすること自体難しかったのではないかと思う。
縦型動画で言えば、それこそアカデミー賞受賞監督のデイミアン・チャゼルがiPhoneで撮影した動画が話題になって久しいが、これでドラマシリーズをやることの難しさは想像に堅くない。チャゼル監督作品のように10分程度で完結すれば良いが、完結せず見続けなければならないスマートフォン動画のドラマ。SNSの動画に比べたら気軽なようで、実は気軽さがそんなにない。Quibiは「Quick Bites. Big Stories.」、大きなストーリーをサクっと楽しむことを謳い文句にローンチされたが、そもそものコンセプトがユーザー目線ではなかったことが誤算だろう。YouTubeが早々にドラマ製作に見切りを付け、オリジナルとして配信していた作品をNetflixやAmazon Prime Videoに譲渡しているのも頷ける。何十億もの資金を溶かした結果となったQuibi。業界全体として好調な動画配信サービスにおいて、ある意味典型的な良い失敗事例として歴史に残るだろう。
■キャサリン
Netflix、Amazonプライムビデオ等のストリーミングサービスで最新作を追いかける海外テレビシリーズウォッチャー。webメディアなどで執筆。note/Twitter