『姉ちゃんの恋人』で岡田惠和の脚本力を堪能 有村架純×林遣都のそれぞれの痛みが明らかに
ホームセンターで働きながら3人の弟たちを養う“肝っ玉姉ちゃん”の桃子(有村架純)が、職場で知り合った真人(林遣都)と出会い、惹かれ合い、互いを意識し始める。物語の導入となる第1話の時点で、なかなかのスピード感をもって王道ラブコメの“起”の部分が描かれたカンテレ・フジテレビ系火曜ドラマ『姉ちゃんの恋人』。11月3日に放送された第2話では“承”に突入。ラブコメ要素に深みを持たせるようなドラマ性が与えられることで、この先に待ち受ける希望と不安、その両面を予感させるエピソードとなった。
真人に恋心を抱くようになったことで桃子は、職場でも家でも上機嫌。弟の和輝(高橋海人)、優輝(日向亘)、朝輝(南出凌嘉)はちょっぴり心配しながら姉を見守ることに。一方ホームセンターでは、桃子が指揮をとるクリスマスに向けた装飾プロジェクトが本格的に動き出し、真人はチーム一丸となった仕事に楽しさを覚えていく。そんななか、仕事で思わぬミスをしてしまった桃子は、商品をお客様に届けるため真人の運転する車に乗り込むことになるのだが、そこで過去のある出来事を思い出し、手の震えが止まらなくなってしまうのだ。
桃子が高校生の頃に両親が目の前で車に跳ねられて亡くなったという過去が蘇り、「なんで克服できないんだろう」と悔しがる桃子に対して真人は「克服なんて簡単にできることじゃないから」と、無理に戦う必要がないことを説く。その真人もまた、自宅で新聞広告を眺めながら、父親とのクリスマスの記憶を思い出して手を震わせるシーンが描かれていた。第1話のラストでも同じように手が震えていた真人。お互いにトラウマを抱えた2人が、それぞれの心の傷に向き合っていくドラマが展開していくのだろうか。いずれにしても、前述の真人の言葉からは、彼自身が“克服”することをすでに諦めているということが窺える。
また、この橋のシーンで描かれるのは桃子の過去だけではない。少し落ち着きを取り戻した桃子が真人に語る、理想のドライブデートのディテールから見える桃子の“恋をすること”への憧れ。車に乗れないという桃子のために思わずタクシーを停めようとしてしまう真人の天然な一面や、桃子を送り届けた家の前でのトマト鍋に対して小さな抵抗を示す真人のぎこちなさ。家でトマト鍋を食べずに桃子の帰りを待ち続ける弟たちの健気さなど、端的に各登場人物の性格や立ち位置が整頓されて集約されているあたり、さすがは岡田惠和の脚本だ。