『危険なビーナス』ディーン・フジオカが仕掛ける罠 伯朗はなぜ疑われないのか?

 矢神家に眠る30億とも言われる遺産。失踪した明人(染谷将太)の行方を追って、矢神家に乗り込んだ伯朗(妻夫木聡)と楓(吉高由里子)は、親族の冷たい視線にさらされる。楓を閉じ込めた人物と「価値のあるもの」について情報を得るべく、伯朗と楓は、康之介(栗田芳宏)の次男・牧雄(池内万作)に会いに行くが、2人に会う直前、牧雄は何者かに襲われていた。

 『危険なビーナス』(TBS系)第2話で、伯朗と楓の前に立ちはだかったのが、康之介の養子・勇磨(ディーン・フジオカ)だ。牧雄を狙ったのが親族の誰かなら、その人物は屋敷に戻っていないはず。そう考えた楓は、伯朗とともに屋敷へ取って返す。不在だったのは、勇磨ともう1人の養子である佐代(麻生祐未)、二女・翔子(安蘭けい)の娘・百合華(堀田真由)の3人で、百合華にはアリバイがあった。

 牧雄の携帯の着信履歴を見て、警察は事情聴取のため、楓を署に連行する。楓を疑う勇磨は、伯朗に「楓さんは本当に明人の嫁なのか」と疑問をぶつける。子だくさんな康之介の一族の中で異彩を放っているのが、勇磨と佐代の養子コンビ。勇磨に対して、伯朗は良い印象を抱いていない。その理由は少年時代の記憶にあった。

 名門の一族で冷遇されてきたせいか、勇磨はどこか陰にこもった性格で、「自分の力でのしあがった」という自負心が鼻につく。楓の素性を探りつつ、楓に向かって「私がパイプ役になりましょう」と矢神家との交渉を買って出る勇磨は、口がうまく腹の底が読めない人物だ。『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』(フジテレビ系)や『シャーロック』(フジテレビ系)など、屈託のあるイケメンを演じるとディーン・フジオカは抜群にハマる。

 勇磨は、伯朗に楓のスマホを盗んで来るように持ちかける。一方、伯朗は、楓に依頼されて、勇磨の車にGPSを取り付ける。「日本の警察の捜査では違法らしいんですけど、お義兄様は一般人ですよね」という楓の理屈はもっともらしく響く。楓と勇磨の間で板挟みになる伯朗。最終的に、楓を信じて勇磨を裏切ることになるのだが、ここで問題になるのが伯朗のキャラクターだ。

 なぜ伯朗は、楓からも勇磨からも疑われないのか? 矢神家と早くに縁を切った伯朗は「部外者」で遺産を相続しないということもある。家の事情を知っており、親族と顔見知りで、明人を助ける動機のある伯朗は、楓や勇磨にとって頼りがいのある、もっと言えば、利用価値のある便利な存在なのかもしれない。ただし、それだと10数年ぶりに親族の問題に首を突っ込んできた伯朗は、もっと煙たがられるはずだ。

 波恵の冷淡でありながらも受け入れている様子や、百合華が突然訪ねて来る場面など、なんだかんだ言って、伯朗は矢神家の人間に信頼されている気がする。助手の元美(中村アン)からもなかば動物扱いされている伯朗は、良い意味で人畜無害な存在なのだ。欲望の渦巻く矢神家にあって、伯朗の周囲だけは無風地帯であり、命を扱う獣医という職業はいかにも伯朗らしい。あえて勘ぐれば、周囲はみんなグルで、伯朗だけがそれを知らないという可能性もあるが……。

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