森崎ウィン×高城れにが届けた未来への希望 “今”とリンクした『カノブツ』最終回

 森崎ウィン演じる外国人留学生のエーミンと、ももいろクローバーZの高城れに演じる幽霊・玲の奇妙の共同生活を描いたよるドラ『彼女が成仏できない理由』(NHK総合)が10月17日に最終回を迎えた。

 漫画家を目指してやって来た日本で不動産から玲が住み着く事故物件を押し付けられ、うんざりとしていたエーミン。しかし、成仏させるために調べた彼女の正体は、エーミンが大きな影響を受ける漫画『氷の武将』の作者・小鳥遊玲だったことが明らかとなった。さらに彼女が生前漫画を描き続けるプレッシャーに苛まれていたこと、担当編集者の中路(和田正人)と恋に落ちていたこと、アシスタントの千春(村上穂乃佳)に憧れや嫉妬が入り混じった複雑な感情を抱いていたことを知る。

 他の人の目には見えずとも、生きている人間と同じように悩みを抱える玲にエーミンは恋心を抱くようになっていた。第5話では玲が取り憑くちゃぶ台を抱え、ようやく外の世界でデートをすることが叶ったふたり。こんな日がいつまでも続けばいいのに――。そう感じ始めた矢先、玲は謎の男・佐古勇蔵(古舘寛治)と出会ったことで生前の記憶を全て思い出してしまう。その日から玲は押し入れに閉じこもるように。幸せな日々の終わりを月の満ち欠けに重ね、満月なんか欠けていくだけだと溢す玲に〈僕にとって君はきっと希望なんだ〉と歌うエーミン。ふたりは確かに思い合っているのに、触れられないという壁が立ちはだかる。

「この世に幸せなんか少ししかなくて、それを椅子取りゲームみたいにみんなで取り合っているんだ」

 エーミンがそう考えてしまうのは、“心の繋がり”が目に見えないからだ。手を繋いだり、身体を重ねたり、自分たちの関係に恋人や夫婦という名前をつけたり。私たちはつい、そういう目に見える繋がりが眩しく思えてしまう。だからドゥアン(ナリン)のように常連客の草野(中島広稀)が女性と歩いているだけで不安になり、「最初から希望なんて持っていなかった」と自分に言い聞かせたり、エーミンのように玲といつまでも暮らすために、ひたすら他人が求める漫画を追い続けたりしてしまうのかもしれない。けれど、押し殺した感情はいつか爆発する。アドバイスをすべて受け入れた結果、作品の中に自分がいないと指摘されたエーミンは漫画家になる夢を諦める。さらに追い打ちをかけるように、エーミンは過労で倒れてしまう。

 重りを取り付けられた玲が、暗い海の底に沈んでいく。第1話からたびたび映されていたこの場面。最初は誰かが玲を殺すために重りをつけて玲を海に投げ入れたのかと思っていたが、この重りは玲が生前自分自身に課した数々のプレッシャーを表現していた。最初から決めていた『氷の武将』のラストを編集部の都合で変え、漫画家という立場に固執した玲。それと同じように、エーミンが自分と生きるためにたくさんの鎖に繋がれようとしている。玲は手紙を通してエーミンの鎖を外し、南貝荘を出て行った。

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