オリジナルドラマ増加のきっかけに? “お金”をテーマに据えた『カネ恋』の誠実さ

 例えば、NHKの『これは経費で落ちません!』は、青木祐子著の小説を基に、お金や経理部のOLの働き方がリアルに描かれていたし、TBS火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』は、朱野帰子の小説を基に、現代の働き方を問うものだった。地上波ではないが、NHK BSプレミアムの『プリンセスメゾン』は、池辺葵による漫画原作で、20代独身女性が、家を買うことを描いた作品だった。

 これらのドラマが、ほかのものと何が違うのかというと、弁護士だとか医師だとか、編集者だとかといった、特別な職業の特別な側面を描くのではなく、ある企業で働く、ある部署の、もっといえば、それすらも単に個人を形作るひとつでしかなく、そんな人物の、個人的であり、誰にとっても切り離せない問題点を重点的に描いていることだ。こうした描き方は、視聴者にとっても、無関係でないテーマであるから、関心度も高まるのではないだろうか。

 現代女性の身近な問題が漫画や小説で描かれ、それらをドラマ化してきた結果、ドラマ自体が自ら、現代にある女性の切実な問題点を見出し、ゼロから企画し、ひとつのフィクションを作る流れができつつあるのを本作を観て感じた。

 残念なことに、このドラマは4話で最終回を迎える。短い話数であったが、身近な問題に真摯に向き合っている作品であると感じられた。今後も、漫画や小説原作とともに、テレビ業界がオリジナルでこうしたテーマを見出す作品が観られるようになっていくことに期待したい。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■放送情報
火曜ドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』
TBS系にて、毎週火曜22:00~ 22:57放送
出演:松岡茉優、三浦春馬、三浦翔平、北村匠海、星蘭ひとみ(宝塚歌劇団)、大友花恋、稲田直樹(アインシュタイン)、中村里帆、八木優、河井ゆずる(アインシュタイン)、キムラ緑子、ファーストサマーウイカ、池田成志、南果歩、草刈正雄
ゲスト出演:梶裕貴、岡本莉音、トミー(水溜りボンド)、登坂淳一
脚本:大島里美
演出:平野俊一、木村ひさし
プロデュース:東仲恵吾
主題歌:Mr.Children「turn over?」(トイズファクトリー)
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/KANEKOI_tbs/
公式Twitter:https://twitter.com/kanekoi_tbs

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