『ブラックパンサー』はチャドウィック・ボーズマン以外あり得なかった 早すぎる死を悼む
さらに、マーベルはわずか1日足らずでチャドウィック・ボーズマンさんへのトリビュートビデオを作り配信しました。『ブラックパンサー』『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のシーンや撮影風景やその時のプロモーション用に撮影された、他のキャスト、スタッフが彼を称えるコメントで構成されています。
撮影時のチャドウィック・ボーズマンさんのきりっとした表情、そしてオフスクリーンの時の笑顔(本当に素敵な笑顔です)を詰め込んだ映像で胸にジーンときます。あのスタン・リー氏と抱擁する場面もあります。僕はこのビデオに収録されている、サンディエゴ・コミコンでの登壇の場にいたので、このシーンは特に胸に刺さりました。このビデオのタイトルは「You will always be our King(=あなたはずっと私たちのキングです)」。その言葉にうなずきます。
マーベルのライバルであるDCも「ユニバースを超えたヒーローへ。ワカンダ、フォーエバー。チャドウィック、力強く眠ってくれ」とメッセージを出しています。チャドウィック・ボーズマンさんの『ブラックパンサー』がアメコミヒーロー映画の地位を向上させてくれたことへの感謝でもあります。
その中で僕は『ワンダーウーマン』のガル・ガドットが「私はとてもショックで悲しい。安らかに眠って。家族の方々へのお悔やみを申し上げます」とコメント、パティ・ジェンキンス監督が「偉大なるチャドウィックボーズマンが亡くなったことにとてもショックを受け、深く悲しみました。私たちの世界にとってあまりにも大きな、大きな打撃をです。偉大な俳優であり、私たちの世界で愛されてきたブラックパンサー。私は彼の家族や友人、そして昨夜ヒーローを失ったすべての人に愛を送ります」と、いち早く哀悼の意を表したのが印象的でした。
彼女たちの『ワンダーウーマン』も、『ブラックパンサー』同様、社会現象となりました。
この両作品、方やワカンダ、方やアマゾンの島という理想郷から姫と王子が世界に目を向け、世界全体の幸せのために立ち上がろうという展開が似ています(さらにワンダーウーマンもブラックパンサーも世の中の理不尽や悪にNO!と宣言するような両手をクロスさせるポーズがあります)。
『ワンダーウーマン』は女性監督×女性ヒーローの女性映画であり、『ブラックパンサー』は黒人監督×黒人ヒーロー黒人映画でした。ガル・ガドットやパティ・ジェンキンス監督は、チャドウィック・ボーズマンさんは同志に近いものを感じていたのかもしれません。
そしてMCUのプロデューサーでマーベル・スタジオのCEOケヴィン・ファイギ氏の「チャドウィック・ボーズマンは彼が演じたブラックパンサーのように頭が良く、親切で、力強く、強い人でした」という言葉には思わず胸が熱くなりました。
そう、やっぱりスクリーンから、「これぞブラックパンサー! これぞティ・チャラ!」と感じてしまうのは、チャドウィック・ボーズマンさんそのものが持っているオーラだったのですね。彼の今後の出演映画は、主演作であり、遺作となってしまった『Ma Rainey's Black Bottom(原題)』(日本公開未定)が控えています。
冒頭でも書いたように『ブラックパンサー』だけでチャドウィック・ボーズマンさんのすべてを語れないし、彼を分かった気になってはなりません。けれどチャドウィック・ボーズマンさんのティ・チャラ、ブラックパンサーにどれだけワクワクし幸せな気分で劇場を後にしたことか。その勇姿を観ることができてとても嬉しかった。本当にありがとうございました。
チャドウィック・ボーズマン フォーエヴァー!
■杉山すぴ豊(すぎやま すぴ ゆたか)
アメキャラ系ライターの肩書でアメコミ映画に関するコラム等を『スクリーン』誌、『DVD&動画配信でーた』誌、劇場パンフレット等で担当。サンディエゴ・コミコンにも毎夏参加。現地から日本のニュース・サイトへのレポートも手掛ける。東京コミコンにてスタン・リーが登壇したスパイダーマンのステージのMCもつとめた。エマ・ストーンに「あなた日本のスパイダーマンね」と言われたことが自慢。現在発売中の「アメコミ・フロント・ライン」の執筆にも参加。Twitter
■リリース情報
『ブラックパンサー』
MovieNEX発売中
MovieNEX:4,000円(税別)
4K UHD MovieNEX:7,800円(税別)
4K UHD MovieNEXプレミアムBOX(数量限定):14,000円(税別)
発売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2018 MARVEL