『わたどう』での姑役が怖すぎると話題に 観月ありさ、初の悪役で魅せる貫禄と恐怖
第2話では、七桜を追い出そうと今日子はさらにエスカレート。「通りゃんせ」を歌いながら籠の中の蝶を眺める猟奇的かつ静かな恐怖と、口答えする七桜に、花瓶を手に取り「疫病神!」と水をかけ、「よそ者はいらないの!」と、観月史上最低のドスの効いた声で言い放つ、その凄まじい迫力たるや。ただヒステリックになるのではなく、怒りが頂点に達した後に、大人の落ち着きを見せてからの爆発ーーこの緩急がさらにシーンに緊張感をもたらす。
これまでも『斉藤さん』のような、物事に動じない強い女性での怪演は見せたことがあったが、もはや鬼姑というレベルを超え、『極道の妻たち』や『大奥』に出てくるような重厚で妖艶な演技に、『ナースのお仕事』(フジテレビ系)など軽快なイメージが、歳を重ね、ここまで貫禄ある演技に繋がるのかと驚かされる。
このドラマは、老舗旅館ものなど、かつての昼ドラに多くあった、女将が嫁を厳しく教育していく作風や、80年代の大映ドラマのように、出生の秘密など、主人公が運命の悪戯に翻弄されながら幸運を手に入れるという、シンデレラストーリーを彷彿とさせる作風だ。しかし、それらと違うのは、ヒロイン・七桜が、最初から女将と真っ向勝負ということ。浜辺も『賭ケグルイ』(MBS・TBS系)で見せたように狂気の演技もできる女優なので、ベテラン相手に当たり負けしない。そんな浜辺に対して観月も、年、声、所作、表情の変化など、これまでにない重みがある演技と、登場するだけで緊張感漂わせる貫禄で対抗している構図が毎話の楽しみでもある。
一方で観月は、悪役として相手を光らせる隙のある演技も見せている。椿が親に反抗する行動や、七桜との愛が深まる姿を見た時のオロオロした表情など、最愛の子が親離れしていく悲しみと怒りが伝わる演技をさり気なく見せている点にこそ、観月の巧さを感じられる。
七桜の素性と目的が分かったことで、第3話から観月のいびりがヒートアップする予感だ。怪演界のリビングレジェンドである佐野史郎もラスボスとして控えているだけに、この先の展開はまだまだ読めない。
これまで野際陽子が長年君臨していた“姑キャラ”。今においてはなかなかそうしたキャラクターを演じる俳優も少なくなってきたように思う。佐野史郎演じる“冬彦さん”が一大ブームを巻き起こした『ずっとあなたが好きだった』(TBS系)で、息子を溺愛する姑役を演じて以降、野際は、ある意味30年近く主演女優たちの壁であり続けたとも言えるだろう。最近は嫁姑問題のドラマが少ない中、まさに野際が演じるようなキャラ設定の姑役が回ってきた今回の観月。佐野との共演も運命を感じるのは自分だけだろうか。
※記事初出時、本文に誤りがありました。お詫びして訂正します。
■放送情報
『私たちはどうかしている』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:浜辺美波、横浜流星、高杉真宙、岸井ゆきの、和田聰宏、岡部たかし、前原滉、草野大成、山崎育三郎、須藤理彩、中村ゆり、鈴木伸之、佐野史郎、観月ありさ
原作:安藤なつみ『私たちはどうかしている』(講談社『BE・LOVE』連載)
脚本:衛藤凛
演出:小室直子、猪股隆一
音楽:出羽良彰
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:鈴間広枝、松山雅則(トータルメディアコミュニケーション)
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ
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